バンクーバー図書館

魔法使いの業

九月に入って、世界がしっとりしてきた。八月の終わりには、夏が終わるのは嫌だなあ名残惜しいなあと思っていたのだけれど、九月になってみると、夕陽なんかの風情も夏とは少し変わって来ていて妙にしっとりと美しく、今度はもうこの一瞬一瞬の秋の時間が名…

九月

九月最初の日は、また夏が戻ったような暑さだった。外の陽射しが強くて、UV の矢↓が気になる。それでも、この暑さが盛夏のそれではないことは、いろんなところから読みとれる。日向は暑くても、日陰に入ると全く完全に涼しい。行き交う人は長袖と半袖の人が…

Eureka!

煮詰まったエネルギーが急降下したと言ったら、友達が「肉を食え」と言うので、そうか、そういうことかもしれないと思い、肉を求めて街に出た。 Vダウンタウンに最近できた、牛丼屋に入ってみることにする。ロゴがオレンジ色の上に黒で印刷されていて、日本…

小さき人々の領域

近くに最近できた図書館の分館に出掛ける。ここはV中央図書館と違ってとても小さい。仕事をしようと思って出掛けたのだけれど、やたらと大人は混雑しており、結局座る場所が見つからず、幼児向けの本が置いてある一角のソファに空きを見つけて膝の上にパソコ…

V図書館読み切り計画:015『まほろ駅前多田便利軒』

V図書館の書棚をずずずーっと目線で追う。これが結構謎なのだが、いわゆる古典と言われるような日本文学の名作などが、ほとんど置かれていない。その代わり、現代作家の同じ本が二冊並んで置いてあるのが目を引く。ビデオやじゃあるまいし、図書館で同じ本二…

ユンケル天使

調子の悪い時ってあるもんだ。昨日の夜から今朝にかけてがそんな時だった。なんだかものすごい勢いで世界が狭まって、目の先5センチくらいのサイズにまで縮まり、しかも真っ暗。そして、脳はありとあらゆるマイナス想念をガリガリ刻み付ける(何がペンで何が…

V図書館読み切り計画:014『斜陽 人間失格 桜桃 走れメロス 他七篇』

小説って何なのか、いつまで経ってもよく分かんない。アートって何なのか、よく分かんないのと同じ。私はそれ程の読書家じゃないし、古今東西の名文学を読み尽くしたなんてのには程遠い。父親がなんだかほとんど病気に近い読書家で、家に恐らく何千冊という…

夏の宵は実験映画が似合う

今日はちょっとだけ曇り。ようやく少し過ごしやすくなってきた。久々にV図書館へ。机に向っていろいろとアート関係の妄想をし、それをサクサクサクっとノートに書き込む。周囲には、英語留学系含む学生さんら50%、図書館で暑さを凌いでいるらしき中高年の方…

V図書館読み切り計画:013『佛教入門』

最近、仏教が気になる。子供の頃、祖母が仏壇にお参りするのに参加して手を合わせ、それから背が伸びていつの間にか般若心経もソラで唱えられるようになり、アナタの宗教は何かと問われれば「うーん、家は禅宗の曹洞宗で...」などと外国人に説明しつつも、「…

V図書館読み切り計画:012『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』

ちょっと前から何故か幼児教育に興味があって、シュタイナーだとかモンテッソーリだとか、一度本格的に読んでみたいなあと思っていた。何でだろうと考えると、近所の子供の勉強を見てあげる機会があったり、子供じゃないけどまだ大人でもない大学生を教えた…

V図書館読み切り計画:011『乳と卵』

卵と牛乳、ということで、これはきっと美味しいパンケーキの作り方に関するほわわんとした小説なのだ、と過剰に期待したのだが、乳は豊胸手術のことで、卵は生理のことだった。というわけで、ふわふわパンケーキの作り方は書いてなくて、蓋を開けたらとって…

V図書館読み切り計画:010『老人力』

おととい、「おっちゃん日和」に浮かされて、中国系のおっちゃん達に包囲されつつV図書館で読み始めたのがコチラ。老人力作者: 赤瀬川原平出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1998/09/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 123回この商品を含むブログ (12件)…

V図書館読み切り計画:009『日本流 - なぜカナリヤは歌を忘れたか』

モスバーガーの店員が、いつのまにか匂い立った春の陽気に朦朧とする朝、ハンバーガーのバンズとライスバーガーのバンズとで思わず作ってしまった和洋折衷バーガー。そのちぐはぐな質感、舌触り、粘り気、匂いに両側から挟まれて、大変に居心地の悪い海老カ…

V図書館読み切り計画:008『だいにっほんおんたこめいわく史』

日本が無性に恋しくなることがある。でもさて、心の故郷・日本などという抽象的なものは、本当はそこにあるんだか、ないんだか。国の旗に赤い丸がついてるところと、赤い葉っぱがついてるところの間に挟まった、なんだかどうも窮屈なアングルから眺めると、…

V図書館読み切り計画:007『にほん語観察ノート』

たまに日本に帰ると愕然とするのが、まずファッション、次に風景、次に新発売清涼飲料水、次に新型携帯、次に新人歌手、そして言葉。こんな時、浦島太郎現象、もしくは私は火星人です現象が起こってしまう。ぽかーーーーーん。ゴゴゴゴゴグヮオーーーーン。…

V図書館読み切り計画:006『しょっぱいドライブ』

まんまとやられた。なんとなくノリの良い題名と「大道珠貴」という名前の字面(なんと読むのか分かんなかった)そしてピンクの犬が舌を垂らしてこっちに迫って来るポップな表紙から、大学生くらいのイマドキのにーちゃん風やせ形前髪ちょっと長めTシャツピチ…

V図書館読み切り計画:005『きれぎれ』

モールってのがこっちにはたくさんある。要するにドでかいショッピングセンター複合施設で、洋服屋やら靴屋やら、コスメ屋やらキッチン用具屋やらが一つ屋根の下に一緒になって小さな街のようになったやつであり、人がそこでお金を使うようにデザインされた…

V図書館読み切り計画:004『超老伝 - カポエラをする人』

バスを待っていたら、バス亭のすぐ横で、完全にできあがったホームレスのおっさんが3人、地面に座ると言うよりは寝っ転がって、何やら会話している。会話というよりは各々が勝手に叫んでいて、しかもどのおっさんもアル中なうえにドラッグでもやってるんだ…

V図書館読み切り計画:003『美人の日本語』

日本に帰って温泉に浸かりたい、という時折どうしようもなく沸き上がる欲望にとても似ているのに「日本語のシャワーを浴びたい...」というのがある。語学留学生やワーホリの日本人がわさわさ居るバンクーバーとはいえ、ここは異国の地。英語帝国のテリトリー…

V図書館読み切り計画:002『人生を救え!』

[rakuten:book:11010099:detail](所蔵日:2005年6月16日)さて、お母さん+赤ん坊のいる書径を離れ、も一冊と手にしたのがコレ。『人生を救え!』という本を読む人は、何か救われたい人生の事情のある人か、町田康の愛読者か、(あるいはいしいしんじの愛読…

V図書館読み切り計画:001『卵の緒』

本を選ぶというのは、レストランで料理を選ぶのに似てるよな、と本棚を目の前にして思った。今日読みたい本が、明日読みたいと感じるとは限らない。本日の体調、頭の中の健康状態、時間帯や天候やさっき食べたもの、これから会う人、ストレスの度合い、バッ…

V図書館読み切り計画:000

この図書館にある本を、全部読んでみたい...。幼稚園の年長さんが、「あのねー、そつえんまでにねー、ようちえんのごほんをねー、ぜんぶ、よむの」と冬のある日思い立つ、あの感じ。 ボルヘスの『バベルの図書館』が頭をよぎる。そう、図書館は無数の小宇宙…