時の流れ

この街で12歳くらいの時から知っている男の子が働いている、
スパゲティ屋にでかける。
レトロ風にしているファミレスみたいな所だ。
ステンドグラスはなんだか教会みたいだし、
そこかしこにこれでもかとアンティークの雑貨、
店の中に路面電車がドカンと置いてあって、目の落ち着く暇もない。
若者が初デートで向き合い、
家族連れは大きな卓を囲み、
さっきからもう3度もハッピーバースデーの歌が聞こえ、
ナルコレプシーの女が、テーブルで眠る、
そんな店だ。
彼はもうすぐ19歳になる。

青白く、不安げに、細く立ち尽くしていた少年は、
いつのまにか、細いままで青年になり、
お洒落に長めの前髪を流して、
きびきびとテーブルを調えている。

私がVでなにをしたのか、
大したことは思い出せないが、
彼は確かに、成長した。
時は流れる。

柔らかすぎるパスタと、
甘すぎるアイスクリームを平らげながら、
その、美しく育っていくものの姿を、
どこか遠くから眺めるように、眺めていた。