2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

散る花を惜しむ心

晴天。朝。どうやら昨夜は雨が降っていたようで、街全体が濡れているのだけど、そのしっとりとした水分をこれから陽光が午前中いっぱいかけて水蒸気へと変えてゆく、そんな春の日。あと2時間もすると外に出る。陽炎が立っているかもしれぬ。水が風と光とに…

V図書館読み切り計画:005『きれぎれ』

モールってのがこっちにはたくさんある。要するにドでかいショッピングセンター複合施設で、洋服屋やら靴屋やら、コスメ屋やらキッチン用具屋やらが一つ屋根の下に一緒になって小さな街のようになったやつであり、人がそこでお金を使うようにデザインされた…

家なき人々

さて、ホームレスであるが、こちらはホームレスが大変に多いのである。なんでもカナダの他の街は冬になると普通に氷点下20度とか30度を記録。家のない彼らは凍死の危機に晒されるっていうわけで、気候が良くて冬でもマイルドな西海岸、特にこのV市にカナダ中…

緩慢日常

緩慢な日常と言えば聞こえが悪い。スローライフと呼びましょう。 久々に東京に降り立った昨年某月。駅でサラリーマンが走ってるのが新鮮だった。背広にタイに革鞄ほど走るに相応しくない形なし。ジリリリリリ、ぴこぴこぴこ、てぃやらりろん、ぽろろ、てぃや…

V図書館読み切り計画:004『超老伝 - カポエラをする人』

バスを待っていたら、バス亭のすぐ横で、完全にできあがったホームレスのおっさんが3人、地面に座ると言うよりは寝っ転がって、何やら会話している。会話というよりは各々が勝手に叫んでいて、しかもどのおっさんもアル中なうえにドラッグでもやってるんだ…

浮遊する寿司

2010年冬季オリンピック日本代表選手に朗報。たぶん金メダルの嵐となるでしょう。なぜかって? よくあるでしょう、日本でのトレーニングでは調子最高だったのに、現地の食べ物が合わなくて腹痛起こしてダウンとか。その心配のないバンクーバー。なぜかって?…

小さいもの礼賛 III

購買意欲っていうか物欲っていうか、そういうものがどんどんなくなっている。年のせいじゃ? と君は言うだろうが、それだと日本に帰ると矢鱈目鱈にモノを買い漁る理屈がつかぬ。ホームシックなんじゃないの? と君は言い、あんたは実はバリバリの愛国主義者…

V図書館読み切り計画:003『美人の日本語』

日本に帰って温泉に浸かりたい、という時折どうしようもなく沸き上がる欲望にとても似ているのに「日本語のシャワーを浴びたい...」というのがある。語学留学生やワーホリの日本人がわさわさ居るバンクーバーとはいえ、ここは異国の地。英語帝国のテリトリー…

小さいもの礼賛 II

小さいものに魅せられた人々とは古今東西老若男女を問わず、どうやらいつも社会に小さい%存在してるらしい。真鍮のトイソルジャーのミニチュアを集めて棚に飾り悦に入るおじいさん、絶対にその老眼では一文字も読めないだろうマメ本を蒐集するおばあさん、フ…

ゴジラの足

桜が開くとおもいきや、数日の雪、更に数日の冷たい雨、その末にやってきた晴天。斜めの高いところから注ぐ目覚めた美女のような日射し。ふと見れば枯れ草が踏みしだかれた駐車場のフェンスの網の破れた辺りにロビンが一羽。暁の空の如き胸の柔らかい羽毛を…

冬眠もしくはひなたぼっこ

すごいことを発見してしまった。 といっても大したことじゃない。 2010年オリンピックの公式マスコットは雪男のクワッチ、シャチクマのミガ、そしてアニマルスピリット(ネイティブの言い伝えに出て来る精霊)のスミの3匹だと思っていたら、なんと4匹目が…

小さいもの礼賛

知り合いのオジサマとカフェで写真の話などしていたら、「あなたは、超接写レンズで、ものの一部を拡大したような写真とかやったら面白いかもねえ」と一言。 「こんなに広い世界がパーっと周りにあるのにさ、それなのに、このテーブルの上のこのパン屑みたい…

DATと青春の終焉II

今日は雨。こんな日は、天気につきあって、ちょっとおセンチになってみる。おセンチになってよくよくくよくよ考えて見ずもすぐに分かることだが、DAT再生機が壊れちまったってことは、今や、地団駄を踏んでみても、歯ぎしりしても、悔し涙に暮れても、溜息を…

V図書館読み切り計画:002『人生を救え!』

[rakuten:book:11010099:detail](所蔵日:2005年6月16日)さて、お母さん+赤ん坊のいる書径を離れ、も一冊と手にしたのがコレ。『人生を救え!』という本を読む人は、何か救われたい人生の事情のある人か、町田康の愛読者か、(あるいはいしいしんじの愛読…

DATと青春の終焉

チャクッ、ヅヅヅ、ドド、ゴワーン。 頭の中で何かが崩壊した音が聞こえた。ような気がした。10年来愛用していたDAT機が突然その律儀な再生活動を停止し、何度ヘッドクリーナーで掃除しても、テレビで言うと走査線が乱れて画像が砂嵐に襲われ、パンダの顔が…

Who Needs Art?

333。 どうやら本日から開会式までゾロ目の333日らしい。ゾロ目だ、目出たい! 2010年バンクーバー冬季オリンピック。街中にオリンピックの飾り付けがなされ、街を行き交う人々の口から漏れる言葉は「おはよう! オリンピック」「こんにちは、オリンピック」…

V図書館読み切り計画:001『卵の緒』

本を選ぶというのは、レストランで料理を選ぶのに似てるよな、と本棚を目の前にして思った。今日読みたい本が、明日読みたいと感じるとは限らない。本日の体調、頭の中の健康状態、時間帯や天候やさっき食べたもの、これから会う人、ストレスの度合い、バッ…

V図書館読み切り計画:000

この図書館にある本を、全部読んでみたい...。幼稚園の年長さんが、「あのねー、そつえんまでにねー、ようちえんのごほんをねー、ぜんぶ、よむの」と冬のある日思い立つ、あの感じ。 ボルヘスの『バベルの図書館』が頭をよぎる。そう、図書館は無数の小宇宙…