冬眠もしくはひなたぼっこ

すごいことを発見してしまった。
といっても大したことじゃない。
2010年オリンピックの公式マスコットは雪男のクワッチ、シャチクマのミガ、そしてアニマルスピリット(ネイティブの言い伝えに出て来る精霊)のスミの3匹だと思っていたら、なんと4匹目がいることが分かった。
マスコットの公式HPトップでも4匹目のことにはあからさまには触れられていない、謎の隠れキャラ。

http://www.vancouver2010.com/mascot/en/profile_mm.php

バンクーバーアイランドに住んでいるマーモットだそうだ。名前は...MUKMUK...ムクムク? マクマク?
バンクーバーアイランドに住んでるからバンクーバー本土の仲間とはちょっと別のよそ者スタンスなのか、それとも冬眠してて出遅れたのか? 確かにコイツの紹介ページには「冬眠もしくは岩や丸太の上でひなたぼっこをしてない時には、外に出て他のマーモットやいろんな動物に出会うのが大好き」とか書いてある。きっと彼は人生の90%くらい冬眠もしくはひなたぼっこをして一人で楽しく過ごしているので、オリンピック気分を盛り上げ、めいっぱい儲けまっせーという他の3人組とは別枠の契約にサインしてるに違いない。個人的には、このキャラが一番好きだ。悠々自適、楽しい時だけキョロっと現われて、いつの間に消えている。皆が「あれ?ムクムクは...」と思った時には、彼はもう既に冬眠の床で黄色やオレンジの夢を見ているか、おいしい水を飲みながらつぶった目の裏側に感じる光の温度や沁みてくる太陽の匂いとじっと対話してる幸せものなのだ。孤独も愛してるだろうムクムク。昔はきっと、座禅なんかも組んでたんじゃないだろうか。痛い失恋もあっただろう。それとも生まれつきのオプティミスト、頭でごちゃごちゃ悩まずして、皮膚感覚と持ち前の勘の良さで「ん?んーんーんー」なんて鼻をピクピク、結局いつも一番気持ちのいい場所を見つけ当てて、自然体でそこにいる。なかなかの人物と見た。

とはいえ、最初は居なかったのに、突然「やあ!」と遅れて現われたこの4人目キャラ、今デパートなどで大量に売り出し中。丸っこくて、思わず抱きしめたくなるカワイイ野郎だ。大中小、大中小特大超特大の4匹のキャラがデパートの壁一面を埋める。壮観。

と、こっちの棚を見ると、オリンピックに俺たちも参加させろよとばかり、わけのわかんないいろんな動物の縫いぐるみが、スキー帽かぶったり、オリンピックカラーのマフラーなんかして、並べられている。『赤鼻のトナカイ ルドルフ物語』の中に出て来る、行き場のないガラクタおもちゃのことをフと思い出す。映画の中でガラクタたちは "misfit"と呼ばれるのだが、これは世の中のスタンダードから外れた、うまく適合できない外れものという意味。ぐるっと周りを見渡すと、(まあ自分も含めて)、世の中においてmisfitな友人知人って結構いる。みんなmisfitであることで苦しんだり、悩んだりしている。misfitは生きにくい。でも、おもしろい。この映画を見ると「misfitでよかった〜」とmisfitな人はmisfitであることへの誇りと勇気が沸き、fitな人はmisfitをちょっと羨ましいなと思うことでしょう。おすすめ。

でも、しかし、オリンピック柄の襟巻きした何の動物かもよくわからん縫いぐるみをクリスマスプレゼントに貰ったら、「これじゃない〜」と子供は泣くだろうな。いやいや、人生何が起こるかわからない。オリンピック熱が覚め、公式マスコットのイメージは商売のために消費され尽くされ、誰も見向きもしなくなった頃になって、このよくわかんないmisfitな謎の動物のことを、青年になった子供がある日懐かしく思い出したりするのだから、さ。