ユンケル天使

調子の悪い時ってあるもんだ。昨日の夜から今朝にかけてがそんな時だった。なんだかものすごい勢いで世界が狭まって、目の先5センチくらいのサイズにまで縮まり、しかも真っ暗。そして、脳はありとあらゆるマイナス想念をガリガリ刻み付ける(何がペンで何が紙なのか?)。最近ずっと調子良かったので、こういう時があること忘れかけてた。のど元過ぎればなんとやら、人ってのは、本当に調子良くできている。

でも、いざ調子悪くなってみると「ぐ」と全てが停止して、どうにもそこから抜け出せぬ。起きても起きてもまだ夢の中にいる悪夢のようにあんまりにも抜け出せないので、突然歌うたってみた。最初、美空ひばりの『真夏の太陽』口ずさんでみたが、苦しくて途中で中断。フと思って『涙そうそう』に変えてみた。これはちょっと効いた。脳の空がすっと晴れ上がっていくのが見えた。心に沁みる名曲とかってのは、あれは比喩じゃないね。本当は心と歌というのは同じ物質なんじゃないかな。(それで穴が塞がった)

それにしても、調子悪...の時のあのものすごく狭い感じってどこから来るんだろう。世界はいつもと同じようにそこにあるはずなのに、心理的世界はしゅるしゅると収縮。鳥籠かネズミ取りの箱の中かなんかに入ったような息苦しさ。この感じ、実はものすごく集中して仕事してる時の空間感覚に似てる。集中仕事の時は息苦しさはそれほどないし、脳が引っ掻かれるような苦痛もないんだけど、世界が自分がすっぽり入る大きさくらいに縮まる感じがある。先週から獣との格闘で集中力を消耗しすぎたために、今回の調子悪が生じたような気もする。気をつけよっ。

さて、気を取り直して、まだ体の周り20センチくらいまで広がったがまだそこでカチカチに固くなっている世界をうんとこすんとこ押しながら外出。タラタラ歩いてると橋の上でホームレス3人組とすれ違った。黒ずくめのおっさんら。カートにものすげー分量の空き瓶空き缶の入ったビニール袋を何個もくくりつけている。3人で協力すると効率がいいってことに気づいたのだろうか。この空き瓶空き缶を換金したら仲良く三等分するんだろか。それとも、突然殴り合いになったりするんだろか。などと、くだらないことを考えるところまで世界が回復。

ダウンタウン付近で知人と会ったら「夏のボーナス!」と微笑みながらユンケル渡された。ユンケルなんて、一度も飲んだ事ないぜ。オロナミンCだけだぜ。初ユンケルだぜ。しかもV市でだぜ。え、ユンケルってそんなに高いの? V市でも売ってるの? でも誰も買わないの?(そんなに無理してまで働く人がいないからだそうです)街角でちっこいストローでちゅーっとオヤジ飲みしちゃっていいの? え、それでユーンと元気が出るの? ... まるで今朝のわたくしの不調を見抜いたかのような栄養剤の突然の支給に、天使の存在を感じずにはいられなかった。合掌。感謝。必ずや飲みますユンケル。どうしよう、コレでものすごく調子よくなっちゃったら。なんか幸せな気分になってきた(まだ飲んでないよーん)ふふふ。

こんな日は、V図書館で読書。なぜかまたとても町田康が読みたくなった。ここにいる学生おっさんホームレス娘浪人などは、みな調子が良いのであろうか。まあ、ともあれ図書館まで辿り着いて参考書なんかを広げたりインターネットで何やら検索してみたりというだけの元気があるのだから、まあまあ調子が良いのだろう。世界中の人はみな調子が良いのであろうか。それともみなちょっとづつ調子が悪いのだろうか。調子が悪い人は今どうしてるのだろうか。マッチ箱みたいな小さな世界の中で一人苦悩してるのだろうか。前の机のおねえちゃんは突っ伏して寝てる。