魔法使いの業

九月に入って、世界がしっとりしてきた。八月の終わりには、夏が終わるのは嫌だなあ名残惜しいなあと思っていたのだけれど、九月になってみると、夕陽なんかの風情も夏とは少し変わって来ていて妙にしっとりと美しく、今度はもうこの一瞬一瞬の秋の時間が名残惜しいような気持ちになってしまっているのだから、人の心は変わりやすい。

何か、簡単にパラパラとめくれて、しかも秋のこのような詩情にしっくり沿い漂う本はないだろうか、と探していて、こんなのを連れて帰って来た。

東京人生SINCE1962

東京人生SINCE1962

一頁目を開くと、「写真は過去を進行形にする」なんて言葉が飛び込んで来た。今朝パラパラと読んでいた本に書いてあった、土門拳の「早く撮らないと仏像が動き出す!」ってのも凄かったけど。

自分がそこにいなかったはずの過去が、奇妙な懐かしさと共に、進行形になるというこの感じ。写真というのは、魔法使いの業であることだけは間違いなし。

☆ 秋燈やアラーキーの女消ゆ