詩みたいなの

投函

朝から、頭痛がして、こんな日はどうも考えが後ろを向く。 遠いなあ、どこもかしこも。 あらゆるものからの距離がやたらに遠のいてしまったような、 どうにもやるせないこの思い。 焦りと言えば焦り、 空虚と言えば空虚、 パチンと臍の緒を切られて、宇宙空…

会合

今日はまた取って返してT都へ 懐かしい人と会った。 駅の中にあるデパートメントストアの5階にエレベーターに乗って行く 小さな窓のたくさんあるビルの四角が見えるカウンターに座って とても丁寧に入れたコーヒーを一杯。 ハムとチーズが挟まっている三角…

猫のおかげで美女になりそこなった話

親戚の娘さんがフルーティストとなり、コンサートに出演するというので駆けつける。 コンサートなんて久しぶりだったので、 最初のピアノの人がショパンがパパーンと弾き始めて 音が空気の色を変えた瞬間にもう、 涙が出そうになった。特にピアノに弱いのだ…

わたしの仕事

わたしの仕事は、リラックスすることです。 もっと正確に言うと、世界をリラックスすることです。 へえ、そんな仕事があったんだねえ。 そんなやたらにリラックスできそうな仕事はいいねえ、と人は言いますが、 世界の軸のある辺りにいて、 そこに朝から晩ま…

検査室

検査室にはお財布もクレジットカードも持って行けません。 お気に入りのバッグも、たぶん持って行かない方がいいでしょう。 アクセサリーも、香水も、つけてはいけません。 時計も、指輪も外して下さいね。 そして、ドアを押す。 こちらの世界で獲得したもの…

旅立って行く人

午後、もうすぐVから旅立って行く人と一杯のお茶を飲みました。 お茶はプールの味がして、底に何か溜まっていました。 このカフェは昔「ジ・エンド」とかいう名前だったと言うので、見渡すと確かに終わりらしいものが四隅にうずくまっていました。 Vはやって…

夜の箱

夜10時。ジャズ。生姜と蜂蜜の入ったルイボスティー。蝋燭の炎。乾燥機の回る音。巨人の手のパープルライト。薬指から吹き出す紫の煙。 あったかい部屋。汗ばむ程に。 贈り物の黄緑色のヒーテックシャツのとっくりが首を優しく包み、贈り物のふかふか靴下が…