引き戸LOVE

春だ春だといい気になっていたら、今日は三歩戻って、冷たい雨となる。
昨日は、どうにももうキラキラの光の感じと合わないなあと、恥ずかしいとさえ思っていた黒いフード付きジャケットが、今日はやたらに街に馴染むばかりでなく、これじゃむしろ寒すぎるくらいの後退。
雲は低く垂れ込め、雨がパラリパラリと来る。
YY履きの人々が、本日はYYをブーツに履き替えたかどうかは不明。
今日はUVのUも届かないくらい空が重い。
とはいえ、なんだか少しホっとしたりもしているのだ。
あんまり駆け足で夏などになられてもねえ。

こんな本を読んでいる。

男の作法 (新潮文庫)

男の作法 (新潮文庫)

この2010年などという、どうにも味気ない世界のひとときを暮らしている全ての男性と女性に読んで欲しい本。
日本家屋というのは、小さなスペースを十二分に生かすために引き戸になっている、などということなんかが書いてあって、
なるほど、そうだなあ、引き戸の家ってバタバタとしないで、こぢんまりとミニマルでいいよなあ、なんて、引き戸などという情緒の籠った建築部位がどうにも見当たらないVで、すうっと引き戸を引く夜の入口のことなど、遠く想像しながら楽しんだ。あ、そういえば、Vの我が家にも2つ変な引き戸がある。一つは、玄関を入っていきなりある風呂場(いきなり、だよ)の入口。洋風引き戸であるので、時々指先まで吸い込まれそうになり、痛い目に合う。情緒などというものは欠片もそこにはない。色は白の、なんだろう、ペンキ塗りかな。
もう一つは、寝室、と呼ばれているゾーンにある、変てこなガラス戸。たぶんこれは日本の障子からヒントを得たのではないかと思うのだけど、磨りガラスにしちゃったので、ちょっとキューブリックの宇宙船みたいになってしまっている。特に、電気を灯すとボーっとこの寝室船が闇に浮かび上がり、そのまま宇宙空間に吸い込まれて行きそうな気配。ある意味なかなか素敵だ。
こうして、探してみれば、Vの極小コンドミニウムなどに、日本の空間デザインの極である「引き戸」テイストが、実は入り込んでいたりするのであった。情緒とか、情感とかは、残念ながら渡来途中の海で魚に食われたらしい。

☆ 裏道も濡れたる午後や花を買う