越境

用事があって、バスに乗って出掛ける。今日はもう夏と言っていいくらいの暑さで、でも、数日前まではまだ寒かったりもして、どうやら昨日辺りに何かの境目がもしかしてあったのかもしれない、ということを外に出てやたらに熱気のある陽の光りを浴びてみて初めて気づいた、という風なので、街行く人の格好がどうしようもなくバラバラなことになっている。

コートあり、Tシャツあり、ブーツあり、タンクトップあり、フリップフロップあり。
色も、もうどうにも統一性がない。重苦しい黒あり、透ける白あり。
私は、お腹のあたりに風がスースー入って来るような薄手のブラウスの上にカーディガンと更に黒いジャケットを着ていたら、すっかり汗かいた。

郵便屋さんは、何故かこちらでは半ズボンをみな履いている。たしか、冬でも。
いつもは、なんとなくコミカルに見えるその半ズボンが、今日は風の温度と似合っていていい具合だった。

日本より荷物届く。二つの物件が入っている。一つは、家族のエジプト土産。なんでも、路上で店を開いていたエジプト人のおじさんに呼び止められ、お前の家族にこれを非常に必要としている者がいるので買うように、と言われて買ってしまったという曰くつき。エジプトの魔除けである。観光客にお土産を売りつけるおじさんのいつものテという気もするが、そのおじさんは、ちゃんと家族構成なども言い当てて、特にこの、この人が!、ということで私が魔除けを必要としている人物と指定したそうで、そこまで言われると、そうだな、ちょっと魔除けが必要だったのかもしれないな、なんて思ったりもするのである。そしてまた、そうだとすれば、この魔除けによって、すっかりと悪いものは払われたのである。変なすっきり感あり。空が青い。

もう一点は、子規句集。一番今欲しかった本だったので、思わずちょっとスキップした。わーい。

☆ 晒したる肌や矩形の光射す