人の気配

本日カナダはビクトリア・デーという国民の祝日
Vもやたらに静かです。
曇天。昨日から雨模様。
ロング・ウィークエンドといって、祝日を加えて長い週末になるので、
普通こちらの人はどこかに泊まりがけで遊びに出掛けたりするらしい。
え、月曜日休みなの? と素っ頓狂な声を発したくらいで、
自分には全然休日という意識がなかったので、
どこにもでかけず、
街が普通よりも静かな普通の一日として過ごすこととする。

テレビのない生活で映画をやたらに観るようになったのだけれど、
最近、こんなのも観た。

セサミストリートマペットで有名なジム・ヘンソンフランク・オズが監督したSFファンタジー
登場するのは全て人形。
と言っても、セサミストリートマペットとはかなり雰囲気が違う。
中に人が入ってそうなデカいやつもたくさん。
しかもストーリーがダークなんだよね。
なんでもCGで作っちゃう今の映画からすると、作り物感いっぱいなんだけど、
CGで作った世界よりも、なんだかワクワクするのは何故なんだろう。
もちろんCGだっても人が作っているのだけれど、
人力で直接動かしてる人形から滲み出る人間パワーの魅力には叶わない。
コレ中に人が入ってるのかなー、とか、
ここのカット割りは人形遣いが映らないように工夫してるなー、とか
ここの素材は何でできてるのかなー、とか
手で触れる世界の、人の呼吸が楽しい。

かなりの汗が映像の後ろに流れている、これ。
椅子に座って頭抱えてては絶対生まれない、人熱アート。
こういうの、好き。

テレビのない日々

近頃ちょっと日常が変わった。
というのは、ケーブルテレビの契約を解約したから。
HDチャンネルはもとより、ベーシックなチャンネルも全く映らなくなった。
その代わり、ラッコがアップルTVなるものを買って来た。
これでVimeoの映像を見たり、映画を見たりしている。
そんなわけで、ここのところ、やたら毎日映画ばかり。
図書館から借りて来たDVDも含め、いろんなのを観ている。

こんなのからはじめて

赤線地帯 [DVD]

赤線地帯 [DVD]

こんなのも観て

有りがたうさん [DVD]

有りがたうさん [DVD]

更にこんなのも観て

マイク・タイソン THE MOVIE [DVD]

マイク・タイソン THE MOVIE [DVD]

このへんにも行って

それでも恋するバルセロナ [DVD]

それでも恋するバルセロナ [DVD]

ここまでも行って

そして、昨日はこれを観た。

AKIRA 〈DTS sound edition〉 [DVD]

AKIRA 〈DTS sound edition〉 [DVD]

実は『アキラ』は初めて観た。サントラが面白いなあと思ったら、芸能山城組の山城祥二氏が音楽担当。
冒険してるなあ。

今でも、フとテレビを点けそうになる。
長年の習慣がそうさせる。
なんとなく、少し落ち着かない心になったりもした。
でも、ラッコとも意見が一致したのだけれど、テレビがない生活って、なんだかホっとするのだ。
解放された、というのがピタっとくる。
何しろ、CMが入らないのが助かる。
いかに日々の視覚体験が自分の意志とは関係なくズタズタに分断されていたかがよく分かる。
思えば、ベルギーF犬街に住んでいた6年は、うちにはテレビがなかった。
ラジオと音楽ばかり、聞いている日々だったっけ。

12年目の涙

ちょうど12年前くらいにロンドンの映画館で観て、
それからずっともう一度観たい観たいと思いながら、
DVDがなかなか発売されず(当時はVHS!)、
ようやくVHSのバージョンがVのビデオ屋のカタログに乗っているのを見つけて
興奮したのに、ビデオが壊れていて借りられなかったりして、
いつの間にか今日になっていた。
遂にVの図書館にあることが分かって、
それでも、他の人が借りていたりしてまたしばらく待って、
ようやく借りることができた、その映画。

観た。

Eternity And A Day (1998 Film)

Eternity And A Day (1998 Film)

この映画、カンヌ映画祭でグランプリまで取っているのに、
どうしてこんなに入手が難しいのだろう。
しかも、なんとなく画質の悪いDVD。

それでも、映画の良さは変わらない。

あの時、ロンドンの二番館風の映画館のまばらな観客の中で、
こっそり泣いていたのだけれど、
今日もまた泣けた。
あちこちの感情のツボがもう一気に刺激されて。

その秘密は。
あの長回しとロングショット。
風景の中で遠く、霞みながらブルーノ・ガンツが少年と手をつないでいる絵だけで号泣。
なんだろう、これ。
こんなに素晴しい瞬間の連続を生きているのに、
それを少しも見ずに、ひとつもそれを呼吸していなかった、
それに気づいて、驚くのだ。
世界はこんなにも美しく、人生の旅はいとおしい。

大抵の映画は一度観てもほとんどのシーンは忘れてしまうのだけれど、
この映画は12年前に一度観たっきりなのに、
ほとんど全てのシーンを覚えていた。
自分にとってはかなり稀な現象。

12年。何か一つのサイクルが閉じた音が聞こえた。静かな夜だ。

まだ濁っていない水

久しぶりに、プールに行ってみた。
ここのところ、改修工事だかのために一ヵ月くらい閉まってた。
再開されたプールの水は、新しいのかいつもよりずっと透明だった。

本日の発見:ひとかきする毎に息継ぎをするんじゃなくて、ふたかきに一度の息継ぎにしたら、なんか速くなったような気がした。たぶん錯覚。

今日はやたら天気が良くて、ベランダの掃き掃除などしてしまった。

Vはもうちょっと初夏の匂いがする。

昨日、ブーツを履いて歩いていたら、周りの人はやたらにフリップフロップで恥ずかしかった。重そうなレインコートも持ってたし。

夏服がそろそろ必要らしい。少し、浮き立つ、心。

度肝...

...抜かれた。
うっかり、というか期待を胸に、この映画を観てしまったからだ。

御用牙 [VHS]

御用牙 [VHS]

三隅研次監督! 
ど・アップ!
巨大スポットライトの前にでも立ってるのか、勝新の瞳がやたらにキラキラ。
えーっ?! と大声で叫びたくなるような、意外かつ華麗なショットの連続。
こうくるかな、と思うと、その予想を100倍くらい裏切って、ぐわっ。
暴力とエロ。血しぶきの量が半端じゃないし、そこまでやるかという女体シーン。
ご家族皆で楽しめる映画ではないので、ご注意。
でも大人は笑って楽しめるだろう。
悪趣味といえば超・悪趣味、しかしこの大胆かつスタイリッシュなカメラと編集...。
スゲー...と思わず溜め息が出ちゃう。
そして、音楽がまたスゴい。
この絵にこの音やっちゃうのかーー!!!
崩壊寸前!! やりたい邦題!!
そこまでやってくれれば、あっぱれだ。すっきりしたっ。
度肝は抜かれ、脳味噌は破裂した。そこになぜか青空。
なんだよ、コレ。

それにしても、勝新のどこまでもくっきりとした輪郭...。
ああいう危ない色気のある俳優さんって、近頃見ない。

カウンセラー付き演劇

知り合いの男の子が参加してる若者劇団の公演を観に行ってきた。
この公演、十代の若者が直面しているいろんな問題を取り上げて、
参加している高校生が自分たちで作った作品で、
恋愛問題、ウツ、自殺などかなり重いテーマを取り上げながらも、全体としてはコメディ・タッチでまとめた演劇だった。
へえーっ、と思ったのが、
会場にカウンセラーが待機してるというところだった。
もともと、この企画にメンタルヘルスの機関が関わっているらしいのだけれど、
演劇を見ているうちに気分が悪くなったり、
相談したくなったら、
いつでもどうぞ、ということだった。

公演の後のQ&Aで、この作品を観て、共感するところのあった人は? という問いかけに、何人もの観客がウツを経験したり、身の回りに自殺者がいて辛い時期を過ごしたり、自分自身が自殺未遂サバイバーだったり、共依存的恋愛関係の経験者だったりしたことを告白していて、ちょっと驚いた。公共の場で、オープンにそういうことを話すのはすごいなあと思ったのと、みんな人生いろいろあるんだなあと。

ちなみに、演劇を作って上演した高校生の話によると、イマドキの若者のストレスの大きな原因はソーシャル・メディアなんだそうだ。周りの人の目が気になったり、自分だけ取り残された気分になったり、なかなかそのままの自分でいさせてくれないご時世ということらしい。そのキモチ、ちょっと分かるな。

八重桜と雨

桜というと日本の専売特許のように思われているけれど、こちらVの春はもうそこら中が桜で一杯なのだ。
まずソメイヨシノらしき桜が最初に咲く。らしき、というのは、どうもこちらの花の方が少しピンクの色味が濃いような気がするのと、あと、これは最近になって気がついたのだけれど、一分咲き、五分咲き、七分咲きと進む嬉し恥ずかしな過程をすっとばして、もう一度に何の惜しみもなくワっと咲く。なので、同じ種類なのかどうか確証がない。気候が違うと、桜の性格も変わるのだろうか。

さて、今は八重桜が満開。
この季節にならないと気がつかないのだけれど、Vの街はあちこちに八重桜の並木がある。
閑静な住宅街の道の両脇に、かなり年季の入った八重桜がずらりと並ぶ。
10年とかそんな大きさじゃなくて、何十年、というサイズの胴回りと高さで、満面の笑みで咲く。

今日はそんな中をラッコ車で走ったりしたのだけれど、雨がポツポツ当って、でもいかにも春という日であった。
こちらには花見という習慣がないので、勿体ない程の花が、あっけらかんと咲いている。
もちろん青いビニールが敷いてあったり、出来上がったおっさんが花びらをくっつけながら転がっていたりもしない。
樹の下でちょっと立ち止まるのは、散歩途中の犬くらいのもんだ。

犬は桜の花びらを鼻先で嗅いでみたりするんだろうか。
白い毛のカールした犬の口元あたりが、真っ黒になっていた。