八重桜と雨

桜というと日本の専売特許のように思われているけれど、こちらVの春はもうそこら中が桜で一杯なのだ。
まずソメイヨシノらしき桜が最初に咲く。らしき、というのは、どうもこちらの花の方が少しピンクの色味が濃いような気がするのと、あと、これは最近になって気がついたのだけれど、一分咲き、五分咲き、七分咲きと進む嬉し恥ずかしな過程をすっとばして、もう一度に何の惜しみもなくワっと咲く。なので、同じ種類なのかどうか確証がない。気候が違うと、桜の性格も変わるのだろうか。

さて、今は八重桜が満開。
この季節にならないと気がつかないのだけれど、Vの街はあちこちに八重桜の並木がある。
閑静な住宅街の道の両脇に、かなり年季の入った八重桜がずらりと並ぶ。
10年とかそんな大きさじゃなくて、何十年、というサイズの胴回りと高さで、満面の笑みで咲く。

今日はそんな中をラッコ車で走ったりしたのだけれど、雨がポツポツ当って、でもいかにも春という日であった。
こちらには花見という習慣がないので、勿体ない程の花が、あっけらかんと咲いている。
もちろん青いビニールが敷いてあったり、出来上がったおっさんが花びらをくっつけながら転がっていたりもしない。
樹の下でちょっと立ち止まるのは、散歩途中の犬くらいのもんだ。

犬は桜の花びらを鼻先で嗅いでみたりするんだろうか。
白い毛のカールした犬の口元あたりが、真っ黒になっていた。