12年目の涙

ちょうど12年前くらいにロンドンの映画館で観て、
それからずっともう一度観たい観たいと思いながら、
DVDがなかなか発売されず(当時はVHS!)、
ようやくVHSのバージョンがVのビデオ屋のカタログに乗っているのを見つけて
興奮したのに、ビデオが壊れていて借りられなかったりして、
いつの間にか今日になっていた。
遂にVの図書館にあることが分かって、
それでも、他の人が借りていたりしてまたしばらく待って、
ようやく借りることができた、その映画。

観た。

Eternity And A Day (1998 Film)

Eternity And A Day (1998 Film)

この映画、カンヌ映画祭でグランプリまで取っているのに、
どうしてこんなに入手が難しいのだろう。
しかも、なんとなく画質の悪いDVD。

それでも、映画の良さは変わらない。

あの時、ロンドンの二番館風の映画館のまばらな観客の中で、
こっそり泣いていたのだけれど、
今日もまた泣けた。
あちこちの感情のツボがもう一気に刺激されて。

その秘密は。
あの長回しとロングショット。
風景の中で遠く、霞みながらブルーノ・ガンツが少年と手をつないでいる絵だけで号泣。
なんだろう、これ。
こんなに素晴しい瞬間の連続を生きているのに、
それを少しも見ずに、ひとつもそれを呼吸していなかった、
それに気づいて、驚くのだ。
世界はこんなにも美しく、人生の旅はいとおしい。

大抵の映画は一度観てもほとんどのシーンは忘れてしまうのだけれど、
この映画は12年前に一度観たっきりなのに、
ほとんど全てのシーンを覚えていた。
自分にとってはかなり稀な現象。

12年。何か一つのサイクルが閉じた音が聞こえた。静かな夜だ。