切り替えスイッチ

いきつけのカフェに行ったら、常連客のおじさんがいて、話した。
この人はファースト・ネーション(先住民)のアーティストで、とても素敵な作品を作っているらしい。
なんというか、人物から発散するエネルギーがすごい。
いつもニコニコしている。
世界が、毎日が、楽しくてしょうがないんだって。
空を見て、
光を見て、
花を見て、
ビルを見て、
何でもないような一角を見て、
その全ての瞬間が、もう美しくて、楽しくて。

おじさんは言った。
「体が食べ物を必要としてるように、心も食べ物が必要だよ」
それから、ホカっと笑って
「美しい人と会って交流すると、心が満たされるのさ」
外はキラキラと晴れていて、ああ、このおじさんは、
この透明な光も丁寧に受け止めて、パクパク食べて心の栄養にしているのだろうな、と思っていると、
チュ、チュ。チュッ。
おじさんは自分自身の手の甲にキスをしながら、
「この体が、大好き、大好き、大好き!」
なんて言っていた。

感謝しながら生きるということは、ああいうことなのだろう。

そしておじさんは
「誰でも、ものすごく幸せになれるんだよ」
と言った。

不幸せと幸せの切り替えスイッチは、意外とどこにでもあるのかもしれない。
ただ、それが、あからさまには見えないだけで。
そっと押せば、チコっと切り替わる。
そのスイッチは、ほとんどの場合に、見逃されてしまうのだけれど。
なんて言っている間にも、あら、そこに一つ降って来た。
押してみましょうか。
チコ。

☆ 光線の先駆け抜けて五月かな