春がきた

今週は、ラッコが飛行機になど乗り、遠く欧州へと出掛けた。ハイジの国に行くんだそうである。ラッコがねえ、そんなことまでするのだなあ。ラッコ車ならぬ、ラッコ飛行機で。

まあ、それはそれとして、ラッコが留守の間、
一人の世界をしばし味わっている。

何をしても一人。
咳をしても一人、っていう例のやつだ。

でも寂しいというよりは、自由を持て余しているような感覚。
ふらふらと食材など買いに出たら、
街の角角、空と地面の間、枝と枝の隙間などに、
春が隠れていた。
空気がとても澄んでいて、そこに春の粒子がもうパラパラと混じっていたのである。
昨日とは、空気の味も、色も、その陰影の具合も、全部違う。
そこに今までいなかった光が、今日はくるくるダンスしている。

ああ、春だ。
そう思って、深呼吸した。
少し、足がスキップしそうになる。
でも、同時に、何か切ないようなこの胸の詰まり。
何かが確実に始まろうとしているのだが、
それは何かが終るしるしでもある。
圧倒的な幸せがそこにあるのに、なぜかとても悲しい。
生きているということは、こういうことなのか、と
角を風と一緒に曲がりながら、
心の中の渦巻きをそっとなぞった。

☆ 如月や胸の少しくキュンとなる