実行の季節

一年のはじめに、今年は何をどうしようかな、と空想して、
それからそれを世界の方に向って「やーい」と放り投げて、
そしたら、世界がこっちに「そーい」と何かを投げ返して来て、
3月は、もはや空想ではない実行の季節です。

空想は自由自在、勝手気ままにできるけれど、
世界から戻って来た宿題は、やたらに具体的だ。
空想妄想でしかなかったものを、現実の中で形にしなければならない。
新メニューの注文を取り過ぎた蕎麦屋の出前みたいなもんだ。
「今、出ました」
と電話で言い訳しつつ、台所ではまだ新メニューの開発途上。
なんだか詐欺みたいでもあるが、
空想が現実になる時というのは、まあこんな感じで進むことが多い。
F犬街の親方だって、作品が出来上がる前に、宣伝しまくってた。
もちろん、世界が「そーい」と言ったら、妄想を現実にする、という意気込みと少しばかりの自信がないと、単なる大ボラ吹きで終ってしまうわけだが。
世界の投げ返すボールというのは、ちょっとした変化球で、
意表をつかれたりもする。
え、そう来るか。
世界はやたらに厳しいヤツなので、プレッシャーがすごいが、
ヤツの魔球をどうやって打ち返すか、頭を捻り、体を動かしているうちに、
とんでもない打法が生まれることもある。

要するに、何か作るということは、
世界とのコラボなんだな、たぶん。
難しいが楽しくもある。

しかし、お客さんは美味しい蕎麦を待ってるし、
台所はてんやわんや。ああ、頭に血が上る。

☆ 三月や髪の毛ばかり伸びており