夢想癖

なんだかやたらに、忙しいのだ。
自転車操業とは、このことか。
頭の中に、全くばらばらの雑事の断片、
考えの破片が常に散乱していて、
非常に落ち着かない。
時々、思念が遥か宇宙の彼方辺りまで飛んで行っていて、
ハっとすると、時間が7秒程過ぎていたりする。
その間に、このカウチの上に間違いなくいた、
という証拠はどこにもない。
テレビの音も途切れていたし、
私に向って話し掛けられていた言葉は全く消滅、
鼓膜は揺れていたはずなのだけれど、
意識には届かなかった。
脳には届いたのかな。
たぶん、そうやって届いたのに意識に昇らないような言葉などが、
またふわふわと脳内を浮遊して、
更に混乱した風景が脳内にできあがる。
近頃、この、どこか遠くに行っている時間が3秒、5秒と増えていっているようで、
これが3分、5分となったらどうなるのかしら。
禅などでは、今ここにいる、ということが重視されるようなので、
今ここにいない、というのはよろしくないのかもしれない。
ともあれ、この夢想癖は、子供の頃からあったようなので、
体質と考えて対処することにしよう。
この、意識が飛んで行った先というのが、自分の中にあるのか、
外にあるのか、未だによく分からない。
内側であるようでもあるし、ずっとずっと遠くの外みたいでもある。
そこからすごいアイディアが生まれたりするといいのだが、
ポカンと口が開いて、涎が落ちそうになった頃に「あ。」と正気に戻って終り、ということがほとんどだ。
どうやら春は、夢想時間が、いつもよりも更に長い。

☆ 白日夢途切れる間なき二月かな