手動の魅力

最近よく運動していることもあって、たくさん食べる必要が出てきた。冬眠中は最低限の分量の食事しかしていなかったけれど、運動なんかもしなかったので、それでどんどん痩せるということはなかった。むしろ太ったかもしれない。でも、運動をしている今となっては、肉・魚・油といった重そうなものも積極的に食べていかないと、ゲッソリやつれるかもしれないという心配が出てきたわけだ。

太らなくて羨ましいとよく言われるのだけれど、普通に食べているのに会う人会う人に「痩せたんじゃない?」と言われるのもなんだか悲しい。痩せたというよりはやつれた、あるいは老けたと言った方が正解なのかもしれないけれど、とにかくここ10年くらい、誰かに久しぶりに会う度に「痩せたんじゃない?」と心配され続けているのだ。

よし、それなら今日は思いっきりカロリーの高いものを食べよう、とラッコが言い出して、フィッシュ&チップスのお店に出掛けた。どでかい魚のフライ2ピースを注文。コールスローとフレンチフライもお皿にぎっしり乗っている。いつもならば半分くらい食べたところで脂っこさに辟易するのだけれど、今日は軽く2ピースを平らげてしまった。これも体にちょっとだけ前よりついた筋肉のなせる業なのか。

魚をお腹に収めた後、またまた演劇フェスティバルの公演に出掛ける。さすがにこれで最後、打ち止め。モントリオールからやってきたDaniel Barrowというアーティストのライブ・アニメーションの上演。彼は中学校の教室にあるようなOHPのプロジェクターを使って、自作のイラストを重ねたり動かしたりしながら、お話を語って聞かせるという、一風変わったパフォーマンスをする人なのだ。

私が最近よくやっている「顕微鏡ライブ・シネマシアター」ともちょっと形式が似通っているので、とても興味があった。物語を声で語りながら絵を見せていくところは、ちょっと紙芝居みたいでもある。いろんなパターンのプリントされた透明シートを重ねたり動かしたりすると、視覚のイリュージョンが発生して、シンプルだけど魔法みたいでもあった。

ストーリーの内容はいまいちピンと来なかったけど、視覚効果はとっても気に入ったし、完璧なローテクで、絵の一枚一枚を動かしているのが機械やコンピューターじゃなくて、人間の手であるところも楽しかった。

こういうキラキラしたアイディアや驚きが隠されている作品を見ると、脳がいい感じで回転しはじめて、今度はああしよう、こうしようなんて、自分の次の作品のアイディアも浮かんで来たりするのだった。楽しい宵。

☆ 春立つや男女二人の影近し