水難

ちょっと用事があって、Vの隣りR市にあるOvalと呼ばれる施設に出掛ける。オーバル、つまり建物が楕円形なのである。聞き覚えある? そう、この施設、今年のオリンピックのスピードスケート競技の会場だった場所なのだ。今は多目的スポーツ施設になっていて、一般の人でもスケートリンクで滑ったり、ジムでトレーニングしたりすることができる。

テレビでは何度も見ていたのだけど、初めて中に入ってみた。デカい。材木をふんだんに使ったアーチ型のナチュラルな天井とガラス張りの外壁から差し込む光が奇妙に静謐な感じを与える施設だ。屋内なのに、ちょっと森の中かなんかの、屋外の感覚がある。ここでオリンピック・アスリート達が滑るのを見たら、きっとぞくぞくしたことだろう。

Ovalは最寄り駅から20分くらい歩いた水辺にあるのだけれど、その途中、やや寂れた裏道のようなところを歩いていたら、向うから来た車がすれ違いに道路に溜まった水をベストタイミングで跳ね上げ、フィクションでもない限りあり得ないくらい頭から顔、胸、腰の辺りまでびっしょり水を掛けられた。集中豪雨でもない限り、路上であれだけの量の水が顔にかかることはまずほとんどなくて、変な話だけど、新鮮な感覚だった。

大切な会合に向う途中だったので、ちょっと困ったけれど、とりあえず跳ね上がったのが水であって、泥水じゃなかったので助かった。水も滴るナントカ、って言うしね、なんて自分を慰めながら、文字通り水を滴らせつつ、水が乾くにつれて、今度は洗顔後みたいに顔がつっぱるなぁなんて思いつつ、ひたすらオーバルへの道を歩いた。

雨の多いこの季節。運転手さん、お願いだから水たまりではスピード落としてね。ああ。

☆ スケートは回るあなたは見てるだけ