古い本

また雨。こうも雨が続くと、参る。
なにか本でも読もうと思って、読みかけのを取り出す。
夏目漱石の『こころ』。

こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

雨降りの北の街で読むような本じゃないのだけれど、漱石先生の文章の上手さに感動しつつ、あまり中に入り込まないように注意しながら読む。古本屋で買った文庫で、頁を開く度に、ものすごく黴臭い。一枚一枚、めくるたびに、指先にも紙の匂いが移る。本が黴びたというのではなくて、紙が古くなると、たぶんこういう匂いがするのだと思う。その昔、家にあった本はみんなこの匂いがしたので、子供の頃、私は本があまり好きではなかったような気がする。親戚からもらった『世界児童文学全集』みたいなのが100冊くらいあったのだけれど、そのうち3冊くらいしか読まなかったのは、テレビが観たかったからだけじゃなくて、この匂いのせいだ、そうだそうだ、きっとそうだ。

☆ 古びたる頁繰るなり秋の暮