秋の気分

完璧に秋が来た。ベランダの野菜と花などは、急にやってきた秋に、ただ竦んでいる。夏が振返り振返り、やたらに名残惜しそうに留まって、またワっと帰って来たりする日本とは随分Vの夏の態度は違う。くるりっ、と背を向けたかと思ったら、こっちを振り向きもせず、駆け足で去って行っちゃったのだ。つれない彼女との別れのようなこの呆気ない幕切れを、どう整理整頓すればいいのだか。

赤ペッパーなんて、もうとても困っている。ようやく1/8くらいが赤くなったところで、秋。夏の間、一つ実がなっただけで、後は何の変化もなかったのだけれど、夏の終わりギリギリに花芽がぐいぐいと出て来て、白い花を咲かせたところで、秋。このまま、全身が赤になりきれなかったら、グリーン・ペッパーでもなく、赤ペッパーにもなれないという、とても中途半端な生涯を送ることになり、花は実となる夢を果たせない。

そんなことは全く頓着しないで、Vの夏は「バイ!」くらいのノリで行っちまったのさ。

後に残ったのは、というか、いよいよやって来たのは、秋の気分。

この、冬とあまり顔つきの違わず、ある意味ヤル気満々の秋とどう付き合っていくのか。なんて言ってないで、Vの秋を急いで楽しまねば。秋の部も、ここでは実はとても短くて、途切れ目なしに冬へと突入するのだから。もう、夜などは、すっかり、寒い。

☆ 秋冷や夜のラジオの歌遠し