花と水

うちには今、紫陽花が一輪ある。もう10日も前に、友達の花屋さんのところで買ったのだけれど、その時に彼女が言っていたことは本当だった。

「短く切って、水をぎりぎりまで入れてね」

その時、彼女が選んでくれたのはやや赤みがかった花で、私は本当は青紫の方が好きだなあと思いながら、家の明りで見てみると、赤とも青とも紫とも言えぬ色の濃淡が良くて、嬉しくなった。

数日めの朝、花弁が萎れているのを見つけた。ああ、終わりなのかな、と思いながら、でもでも、と茎を短く斜めに切って、また花の顎の辺りまで水をたっぷりと入れて飾っておいた。萎んだ花は、水をごくごくと飲んだように、何時間も経たないうちに、また瑞々しく花弁の隅々まで色を踊らせた。

こんなことを、何度も繰り返して、茎はどんどん短くなり、やっと水に浸かるくらいの長さを残して、昨日。いよいよ本格的に萎れたのかな、とよろよろした花の頭をそっと手に取った。そうして、もう一度、茎の先を注意しながら、少し斜めに切ったのだ。

水を喉元まで入れて、今朝。ああ、またピンとした鮮やかさに戻った。花ってすごいな。そして、気がついたら、花は前よりずっと青みがかった紫色へと変わっていた。毎日見ていたから、その少しずつの変化にもう少しで気づかないところだったよ。ずいぶん長い間一緒なので、なんだか単なる花とは思えなくカワイイ。

☆ 紫陽花の水飲む音の聞こえたり