変な技術の熟練

ここのところ、写真の装丁用のマットを切るという、柄にもない作業をやっている。最初は直線を引いたり、それと直角にもう一本の線を引いたり、線に沿って真っ直ぐ切り取ったり、などという細かな作業がどうにも苦手で苦手で仕方なかったのだけれど、さすがに一週間もやっていると少しは慣れて、コツが掴めて来て今日は楽だった。スイスイ。

外から見ると、何でもないようなことが、やってみると案外と奥が深かったりするものだけれど、このマット切りというのもその一つで、普段はマットなんかよりもそこに装丁されている絵や写真が目に入るのだけれど、ここのところ、中身よりもマットがどう入っているかが気になって仕方がない。

もし今、美術館なぞにいったら、大変なことになる。マットや額縁なんかばっかりジロジロ見て、あら、何がそこに描かれてたんでしたっけ、なんという具合で出口に到達してしまうことだろう。

何十枚もマットを切った。黙々。いや、疲れた。体を使う作業というのは、でも、失敗も上達もはっきりと眼に見えるので、やりがいがある。というわけで、ごちゃごちゃと失敗を繰り返しているうちに、やたらマット切りが冴えて来た。変なものに冴えちゃったなあ。仕方ないので、家にある写真なんぞを、片っ端から装丁してみようかしら。腕が鳴るぜ。

☆ はぐれ雲急ぎもせずや秋近し