レイシスト!

Vの郊外、隣町のRに用事があって出掛けた。オリンピックの時にできたカナダ・ラインという電車に乗って行くとすぐなので、最近このRによく出掛ける。

この地域は、特に中国人系の移民が多い。中華料理店は数知れず。お店の看板はほとんど中国語。中国人系をはじめ、とにかくアジア系移民の多いところなので、私なんかも何の努力もなく完璧に風景に馴染んでしまう。一瞬、「あれ? ここはどこ?」と思うくらい、道ゆく人はアジア系が多い。

さてさて。そんなアジアな街の文化センターの付近で、ちょっくら迷子になり、駅はどっちだったかななどとキョロキョロ歩いていたら、いきなり足元に何か大きくて鋭利で重そうなものがバサリと飛んで来た。普段から注意散漫なので、それが何かも確認せず、まあ子供の足から逸れたスケボかなんかだろうくらいに感じながら、そのまま遠くをキョロキョロとスキャンしながら通過しようとするその背中に、確かに聞こえたぜ、その声。

Go back to your country!

あまりに意外な展開だったので、度肝を抜かれて、声の主を睨み返す余裕すらなかった。通過した時にさきほど目の端に入った姿の記憶からすると、10代半ばくらいの、郊外で、やることなくて退屈しちゃってる白人系のにーちゃんら(ねーちゃんも一人いたような)のグループがその声の主。

カツン、と音をたててその声は頭にぶつかった。というよりも、心の奥に突き刺さったのである。悲しさと怒りが勢い良く吹き出してきたのだけれど、私はそのまま、彼らを振返ることなく歩き去る選択をした。そしたら、追い打ちを掛けるように、「ニーハオー!」と、からかう声がまた飛んで来た。

次にあったらタダじゃおかねえ。

海の外での生活も、もう随分と長くなり、F犬街にいた頃には、路を歩いていると街角にしゃがんでたむろってる兄ちゃん方に「シノワ、シノワ」と必ずひやかされた。でも、直球ズバリの人種差別がこんな具合に降って来たのは、正直今回が初めてのことだった。しかも、移民の国カナダの、多国籍度この上ない街Vで。予想もしてなかったので、とても悲しかった。

この国は、先住民を除いては、みんなどこからかやってきた人たちの集まりなのであって、「おめえの国に帰れよ!」は禁句である。その事に気づいているのか、いないのか、そこのにーちゃんら、全くの阿呆ですぜ、その態度。私は帰ってもいいけどさ、あんたも帰らなきゃならなくなるよ。帰るとこあるのか、あんた。徹底的にナンセンスなのさ、その言葉。レイシズムは最高に愚かで醜い。

☆ 差別主義者のしゃがんでいたる残暑かな