声を見つける
昨日、お昼を食べながらフとテレビをつけたら、3秒で釘付けになった。それは、ある女流作家のドキュメンタリーで、番組の中でインタビューされていた江國香織さんの言葉によると、この人の本は書店で他の本と一緒に並んでいても、そこから立ち上る気配がちょっと違うのだそうだ。丁度、そんな感じで、テレビの画面から凛とした何かが出て来ているような感覚があって、それで目が釘付けになってしまった。
その作家は須賀敦子という人で、私はこの人のことを今日まで知らなかったのだけれど、やはり番組の中で須賀さん自身が語っていた言葉の一つ一つが余分なものを全て削り取った光る鉱物のようで、「あっ」と何度も心の中の深いところで声が聞こえた。こういう声は、自分で出そうと思って出るものではなくて、世界の一番深いところにある秘密(それは神様に近い場所にある真実でもあるのだが)が言い当てられている時だけに聞こえる声なのだ。
フランスを経てイタリアに渡り、そこに住み着き、やがて日本に戻って、ヨーロッパと日本との二つの国を生きながら、その中で呼吸してきたことを初めてエッセイとして世に出したのが62歳の時だという。テレビのインタビューの中で、須賀さんが、自分はイタリア人だとか日本人だとかいうことを消していって、人間としてどうかというところに入って行って、そういうことが結果的にいくつもの扉を開いてくれたような気がする、というようなことを言っていたのに「はっ」として、彼女が大学で教えていた時に、いつも自分の声を見つけること(find your voice)が大切だと言っていたという逸話を聞いて、何か目の前に一つの小さな明りが灯ったような嬉しさがあった。
次に読む本が、こんな風にキラキラとやってくることも珍しい。
- 作者: 須賀敦子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1990/12
- メディア: 単行本
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ベランダのきゅうりの花が、今朝見たら咲いていた。黄色くて、どれも太陽の方を向いている。
朝顔日記:32日目:4つめのはやっぱり葉っぱだ。どうして最初のは双葉なのに、その後は一枚ずつ出て来るんだろう。
☆ 跣足の爪鴇色にせむ赤にせむ