爪のこと

ここ2週間くらい、密かにやっていたことがある。それは、爪を伸ばすということ。実は爪を伸ばすのが大嫌いなのだ。大嫌いなことをわざわざやっている必要もないのだけれど、なんとなく、一度、伸びた爪の感覚というのを知りたいな、とかフと思ったのだ。

爪が伸びて来ると、もうどうしてもすぐに切りたくなる。これは、もともとそういう風に体の感覚ができているのかもしれないし、子供の頃にピアノを習っていて、爪をいつもギリギリのところまで短く切っていたからかもしれない。

とにかく、思えば今の今まで、爪を伸ばしたことが、一度もなかった。うっかり爪切りを忘れて旅行に行って、伸びて来た爪が気になって気になってしょうがない、なんてことは一度二度あったように思うけれど。

ネイルアートなんていうのが巷には流行っていて、女の子は軒並み伸ばした爪をぴかぴか奇麗にしてきらきらしているというのに、なんで伸ばせないんだろう。あの伸びた爪の乙女らは、爪と指の肉の境目あたりがイライラしたりしないのかなあ、なんて思いつつ、ひょっとしたらやってみたことがないだけで、意外と伸びてしまうと気にならないのかも、なんて、やってみたのだ。

かなり伸びた。でも、やっぱりどうしても境目のあたりがイライラ、ソワソワしてきて、気になってしょうがない。それでも、今日まで努力して伸ばしていたのだけれど、今朝になって、我慢できなくなって、パチパチパチ、と切ってしまった。

ああ、気持ちいい。なんなのだろう、この爪と私の関係。

無人島に、一つだけ何か持って行っていいと言われたら、爪切りを持って行くかもしれない。

☆ 夏服や切りたる爪の若さかな