秘密の特技

凄まじい晴天。目が開けられないくらいの陽光。世界が、やたらに白く、発光している。
振返れば山。こういう晴天になって初めて思いだすのだけれど、Vは山に囲まれているなんてのではなくて、
山に見下ろされている。この山が、やたら高いばかりでなく、デカい。
日本の山は高いとか低いとか、まあ細長い日本列島の背骨のところにある山だから、そんなに太っちょではないのだけれど、
Vを威圧する如くに見下ろしている山々は、とにかく質量が大きいのだ。
あれは岩なんだろうか土なんだろうか。どっちかというと、岩なんじゃないだろうか。とてつもなく、でかい岩。
それが、くっきりと新鮮な緑色をしていて、てっぺんにはまだ白いものを乗せている。
その中でも一番好きな山は猫の耳がつんつんとなっているようなやつで、こっちでは「ライオン山」とか呼ばれているやつ。
トトロの耳にそっくりなので、勝手に私はトトロとも呼んでいる。
この耳のところに雪が残っていて、空が青くくっきりと輪郭が出る日は、それを見ただけで足が空中に3センチくらい浮く。
今日もそんな日で、用事の帰り、バスに乗らずに、他の人にばれないように注意しながら飛行して帰った。
やたら変な笑みなど浮かべていたので、道端に落ちた緑の小枝を小さな指で拾っていた女の子には見抜かれたかもしれない。

☆ 小雀のぐっと構えて飛びにけり