耳は垂れたままだった

天気が余りにも良い上に、昨日から明日にかけて、イースターの週末とやらのホリデー気分なので、浮かれてモールなどという場所に朝ご飯を食べに行く。このAモールは行き交う人の98%くらいが中国系(もしくはアジア系)という、不思議な場所。日本の100円ショップD(しかしこちらでは2$=200円となっている)が入っている。本日のお目当ては、最近ここのモールにできたUCC系列のカフェ。確かに、コーヒーがサイフォンから注がれていたりする。でも、メニューには「うなぎスパゲティー」など、不思議なものがたくさんある。私はフィリピンスタイルのブレックファストなるものを注文してみた。少し酸味のある魚の丸揚げの横に目玉焼きとライスが並んでいる。一体この魚が何者なのか、メニューに書かれた謎の名前からは想像すらできない。それでも、真ん中からパッカリ開かれて、頭までカリカリに揚がったそいつを、尻尾の先だけ残してガリガリと食べ尽くしてしまう自分は、間違いなく日本人だ。

モールの真ん中にある噴水の周りには、「イースターバニーと一緒に写真を撮ろう」のコーナーだの、「イースターエッグ・ハンティング」のコーナーだのがたくさんできている。輪投げや綿飴、フェイスペイントや風船屋なんかも出ている。そこら中が、花とチョウチョと、卵と兎と、鶏と派手なリボンで溢れ返っている。そして、チョコチョコ駆け回っている無数のヒヨコ達、と遠目に見えたものは、このお祭り屋台群に群がっている子供達だった。イースターバニーは定刻よりやや遅れて登場。歯が飛び出て、やや邪悪な顔をしたピンクの野郎を想像していたのだが、やって来たのはブルーナうさこちゃんを巨大にしたような、青い服を来た、シンプルでカワイイやつ。頭がでかい。ずっと倉庫にしまわれていたのか、耳が前にしょんぼりと垂れている。これを係のオネエサンがやたら乱暴に伸ばす。ぐいぐいぐい。ああ、頭がずれちゃう。ぐいぐいぐい。それでもまた耳はぺろんと垂れる。耳が垂れていようと、伸びていようと、ウサギはウサギだ。順番に並んだ子供達は一人ずつ、時にはお兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に二人で、嬉しさを隠しきれない様子で、ウサギの前に立って写真に収まっている。デカいうさこはちょっと子供の肩に手を添えたり、もう一方の手を上げてポーズしたりと、サービスに励んでいた。ウサギの前に立つ時の子供の顔が、本当に美しい。ちょっと恥ずかしくて、たまらなくワクワクして、やたらいつもより真っ直ぐ立って、輝いていて、吹き出しそうで、泣き出しそうで。お父さんやらお母さんやらが大ハッスルで撮った写真の一枚には、間違いなくこの春の日の午後の光の記憶が映り込んでいると思うよ。

☆ うさぎ氏を待つ子らの眼や イースター