風と拮抗。

一日強風。これが巷で言う「春一番」とかいうものなのだろうか、それともただの突風なのだろうか、「春一番」って、いつの季節だったっけ、などと思いながら、凄まじい強風の中を歩いていたら、眼の中にどうやら三角形の形をした塵が入った。しかも両目に。左目のはおむすびくらいの緩やかな三角、右目のは定規みたいに尖った三角形。いや、違う、ピラミッドの立体三角、しかもメタル系。コンタクトレンズの裏側で、その尖ったやつが瞬きする度に回転するので、思わずバスの中で眼を取り出したくなった。

混雑を極めているバスから降りると、また強風。人に見られないように右目コンタクトだけを取り出して、世界の半分が曖昧になったまま歩いて行く。それにしても、この風、寄っかかれそうな質感で吹き付けて来る。でも、その冷たさの中に、やっぱり春が隠れていて、街中の全てがやたらハタハタしていた。

☆ ジャケットも踊り出したり春の風