洋食屋なる洋食屋

曇り時々雨。起きればグレーの空。今日はV市日本領事館に書類を取りにゆく。日本領事館はとっても立派な建物の8/9階にある。大きなガラス窓からは水辺が一望できる。絶景。子供連れの家族が、窓から外を見て、子供は何度も「スタンレーパーク? スタンレーパーク?」と繰り返していた。海外にある日本の領事館はF犬街に居た頃と今と二カ国しか体験していないけれど、F犬街地域の領事館もまたかなり立派なものだったように記憶している。

V市の日本領事館にはパスポートの更新とかそんなので結構何度も足を運んでいるけれど、とてもホっとする空間で、ついつい長居したくなる。領事館なるものは、海外在住の国民の暮らしをサポートするオフィスなわけだから、まあどこの国でもそんなものなんだろうな、と思っていたのだが、やはりV市にあるお隣A国の領事館に行く機会があって、そうでもないらしいことが分かった。

まあ、テロ対策だなんだって、空港なんかでも入国審査が厳しいA国であるけれど、領事館の外の入口の所にガードマンが何人もいて、そもそも中に入るのが結構大変。エレベーターにととっと乗って、フリーパスで上まで行ける日本領事館とは全然システムが違っている。入口にまず空港のセキュリティーチェックみたいなゲートがあって、小銭鍵腕時計ベルトなどをプラスチックの入れ物に入れて、ゲート通過。ベルトまでだよ、全く。あ、そもそもその前に、A国領事館に行く時は、鞄とかバックパックとかを持ち込めないことになっていて、小さいポーチならいいのか、それもダメなのかイマイチ分からず、うっかりすると玄関から中にすら入れてもらえず出直しなんていうことがあるらしいので、結局「丸腰」で行くのが一番安全らしい。

そう、「丸腰」じゃないと入れてもらえないのだ、A国領事館。ところ変われば...であるけれど、ホっとするなどという気持ちとは正反対の感情が掻き立てられる場所である。不思議な国だよA国。どこから来て、どこへ行くのかA国...A国よ。

どうにもグレーで、グレーが内側に染み込んで来るようなこんな日は、と、夕刻「yoshokuya」へ出掛ける。このお店は洋食屋という名前の洋食屋である。遥か倭の国では「うどんや」という名前のうどんやなどというものはちょっと芸がないというか、あんまりストレートすぎて食欲をそそらないということがあるのだけれど、海を渡ってここVではうどんやという名前のうどんやも堂々とうどんやとして機能するであろう。というわけで、洋食屋。

V市のJ-レストランの中では老舗らしい。エビフライ定食、オムライスなど、yoshokuyaらしい洋食群がメニューに並ぶ。店内は、高原のペンション風? ヨーロッパ風とかドイツ風などと呼んでもいいかもしれないけど、一番ズバリなのは「洋食屋風」だな。ちょっと古ぼけた感じも雰囲気が出てる。カキフライ定食注文。ポテトサラダが添えられてるところも洋食屋。泣けるぜ日本のコンフォート・フード。店内に流れる音楽のボリュームがやたら小さいこの店で、あつあつの牡蠣を頬張っているうちに、幸福がじわじわ沸いて来て、いつのまにか顔が笑っていた。