ともだち

友達と、海辺を散歩した。
Vの水辺には、泳ぐ人やら、寝そべる人、人、人、人。
気温が上がって、これなら冷たいVの海でも、泳げそうな気配。
水面はきらめいている。こんな美しい街が存在したのだろうか、というくらいの眩しさ。
目線のずっと先には、貨物船が霞みながら近く、遠く浮かんでいる。
犬通過。今日はちっこい犬との遭遇多し。
アイスクリームで手がベトベトになって、それでも幸せなのは、
しかし、この街の夏がとめどなく美しいからではない。
ともだちがそこにいるからだ。

ともだちのいない街は、どんなに美しくても楽しくない。
そういうことだ。
土管の中、地中の果てでも、ともだちがいたら、幸せであるに違いない。

なんて思いながら海辺からダウンタウンの方向に歩いて行くと、
ゾンビの集団に出あった。
なんでも、ゾンビウォークっていうんだそうだ。
血糊なんかをいっぱいくっつけた男女が、うめき声を上げながら行進している。
意味不明、脈略皆無。
なぜ、8月20日、なぜゾンビ。
まあ、これといって夏祭りもないので、誰かが思いついて始めたイベント?
確かにうめき声は、ちょっと「なまはげ」系トーン。
ああ、指の作り物を口にくわえちゃってる人もいる。
血みどろのウェディングドレスで並んで歩いてるゾンビは、
女性の方は妊婦さんである。お疲れさま。

みんなケチャップあるいはヌテラみたいなのを塗りたくっているので、
バス停のポールなんかが血みどろになっている。
苦手なんだよなー、こういうの。
やっている本人達は楽しいのかもしれないけど、
こっちは、なんか白けるんだよなー。

なるべくゾンビを避けつつ散歩。
ちょっと奇妙で、でもどこまでも奇麗な夕暮れだった。
一生、忘れないかもしれないような。