箱
今日は、箱をいろいろ開けたりした。
昔のものが入っている箱なんかである。
埃がいっぱい乗っていたり、文字がかすれていたり、
黄ばんでいたりする、
隙間から、忘れていたものが発見され、
時間が巻き戻る。
ついでに、自分のものではないらしい箱なども開けてみたりした。
そこにあるのは、自分の記憶ではないのだけれど、
古い物、誰かの手によって保存されたガラクタ、
差出人の文字のよく読めない年代物の手紙などは、
経験していないはずの思い出の中にこちらを引きずり込む。
物欲はどちらかと言うと薄い方だし、
家具だの電化製品だのといった、引っ越しする時に重そうなものは、
あまり買い込みたくないのだが、
こうして、何度かの引っ越しを経て、結局いつまでもついて来た一箱のがらくた達には、
鼻では分からない匂いがあって、
一つずつ取り出しては、光に透かしてみて、
その匂いを頭の裏側に投影して、
声にならない感嘆、あるいは内側に静かな笑みの通過。
そして、結局、そのがらくた達は、また箱の中へと仕舞い込まれるのでした。
☆ 裏道のクローバーに蜂ひとつ