悲しき暴徒

スタンレーカップ・ファイナルの第七戦。
泣いても笑っても、これで最後の試合。



負けた!
勝負は時の運。
しかし、あそこまで盛り上がった群衆が「そうだね、時の運。ウン!」などと大人しくウチに帰るわけもない。
敗北の屈辱により暴徒と化した群衆が、ダウンタウンで車に火を放ち、
警察官は催涙弾で応戦。
そして、群衆は次にパトカー二台をメチャメチャにして、放火。
(ここまではテレビで見た)
窓からダウンタウンを見渡すと、三カ所くらいから黒煙が立ち上っている。
そして、なにせ警察署が近くなので、
パトカーが次々と集結。どうやら隣町あたりから招集されてやってきたらしい。
今、窓の下を覗くと、道にずらりとパトカーが並んでいる。

サイレンが鳴る鳴る。
叫び声があちこちで。

非常に後味が悪い。
今日は本当は居合の稽古に出掛けるつもりだったのだけれど、
街中がワラワラと落ち着かなくて、気持ちがどうもしっくりいかないのと、
もし負けたら街が大変なことになると聞いていたので、
家に留まった。
正解だったかもしれない。
こんな時に長いもの持ってバスにでも乗ったらば、
酔っぱらいに絡まれたかも。

それにしても、群衆とは時として暴徒と化す、
恐ろしいものを、すぐ目の前で見た。

その後も暴徒の狼藉は続き、
デパート、銀行、ドラッグストアなどのガラスが割られ、
暴徒が商品を荒らして持ち去ったり、
殴り合いの喧嘩等もあちこちで発生。
けが人が続出。
ダウンタウンの総合病院の収容人数を超えたのだそうだ。
車もあちこちで7台くらいだか燃やされた、と。

これは、いかん。
いくらスポーツに夢中になったからといって、
これは筋道が通ってない。

悔しいーって思いながら、
でも普通にウチに帰ったファンも、もちろんたくさんいるのにさ。
八つ当たりにも程がある。
ご贔屓のチームが負けたってことよりも、
自分の底にある怒りを外に出したくて、
うずうずしてたんだろうな。

これは口実にすぎない。
平和そうに見える「世界で一番住みやすい街」の底に溜まった怒りの大きさ、
想像すると、恐ろしい。

そういえば、今日だって、近所のスタバの前で、
おじさんがしゃがみこんで、大胆にゴミを漁ってた。
一見、普通のおじさん。
こんなの日常風景だから驚かなくなってたけど、
この街には、不満や不幸せも、あちこちに散らばっていて、
それを見ないようにして毎日を過ごしているってこともあるのだ。
目が覚めた。

☆ 六月の夜の悲しき暴徒かな