悲しき暴徒
スタンレーカップ・ファイナルの第七戦。
泣いても笑っても、これで最後の試合。
あ
あ
あ
負けた!
勝負は時の運。
しかし、あそこまで盛り上がった群衆が「そうだね、時の運。ウン!」などと大人しくウチに帰るわけもない。
敗北の屈辱により暴徒と化した群衆が、ダウンタウンで車に火を放ち、
警察官は催涙弾で応戦。
そして、群衆は次にパトカー二台をメチャメチャにして、放火。
(ここまではテレビで見た)
窓からダウンタウンを見渡すと、三カ所くらいから黒煙が立ち上っている。
そして、なにせ警察署が近くなので、
パトカーが次々と集結。どうやら隣町あたりから招集されてやってきたらしい。
今、窓の下を覗くと、道にずらりとパトカーが並んでいる。
サイレンが鳴る鳴る。
叫び声があちこちで。
非常に後味が悪い。
今日は本当は居合の稽古に出掛けるつもりだったのだけれど、
街中がワラワラと落ち着かなくて、気持ちがどうもしっくりいかないのと、
もし負けたら街が大変なことになると聞いていたので、
家に留まった。
正解だったかもしれない。
こんな時に長いもの持ってバスにでも乗ったらば、
酔っぱらいに絡まれたかも。
それにしても、群衆とは時として暴徒と化す、
恐ろしいものを、すぐ目の前で見た。
☆
その後も暴徒の狼藉は続き、
デパート、銀行、ドラッグストアなどのガラスが割られ、
暴徒が商品を荒らして持ち去ったり、
殴り合いの喧嘩等もあちこちで発生。
けが人が続出。
ダウンタウンの総合病院の収容人数を超えたのだそうだ。
車もあちこちで7台くらいだか燃やされた、と。
これは、いかん。
いくらスポーツに夢中になったからといって、
これは筋道が通ってない。
悔しいーって思いながら、
でも普通にウチに帰ったファンも、もちろんたくさんいるのにさ。
八つ当たりにも程がある。
ご贔屓のチームが負けたってことよりも、
自分の底にある怒りを外に出したくて、
うずうずしてたんだろうな。
これは口実にすぎない。
平和そうに見える「世界で一番住みやすい街」の底に溜まった怒りの大きさ、
想像すると、恐ろしい。
そういえば、今日だって、近所のスタバの前で、
おじさんがしゃがみこんで、大胆にゴミを漁ってた。
一見、普通のおじさん。
こんなの日常風景だから驚かなくなってたけど、
この街には、不満や不幸せも、あちこちに散らばっていて、
それを見ないようにして毎日を過ごしているってこともあるのだ。
目が覚めた。
☆ 六月の夜の悲しき暴徒かな