空飛ぶ絨毯

公演の翌日というのは、宇宙から地上に戻る途中の空に浮かんでいる。
大抵は、朝寝して、一日ダラダラと過ごすのだけれど、今日は朝からラジオの仕事もあって6時起きであった。

スタジオの外に、桜が咲いている。
放送の間中、雀が桜に群がって、花びらを散らしてた。
食べてるのか、遊んでるのか。
時々、窓枠にちょこんと止まって、スタジオの中を覗き込んだりもしている。

なんだろう、人間どもが、変な棒みたいなのを前にして、口をパクパク。

雀はちょっと首を傾げて、また飛んで行った。

帰り道、日頃あまり通ったことのない辺りをぽつぽつと駅まで歩いてみた。
どこの角を曲がっても、歩いても歩いても人影はあまりなくて、
八重桜の並木だけが、遠くまで揺れていた。一つの辻に来ると、散った花びらがもくもくとした絨毯になって、もう地面の見えなくなるくらいに積もっているところがあって、そこに乗った途端に足の感覚があまりに柔らかいので、立ち止まるしかなかった。

周りには誰もいなくて、花びらだけが散りかかる。濃いピンクの。桜色の。

もともと地面からすこし浮いたところを歩いていたのだけれど、花の絨毯に乗ったら上空まで昇ってしまった。

周りの静かな家々を眺めながら、ああこの街も悪くないな、好きだな、と、なんだか懐かしくなりながら、しばらく飛行したのである。

☆ 餘花ありて歩みにひとつ句読点