足さず引かず

すっきり晴天。
Vの日本領事館の前で、人を待ちながら、ぼんやり空を眺めていたら、
カラスが目の前の木に止まって、
一生懸命何かやっている。
そのうち、もう一羽やってきて、
これまた一生懸命何かやっている。
その一生懸命度と、嘴を器用に使った作業があんまり素敵なので、
見とれた。
嘴で木の枝の枯れたところを挟んで、
首を90度左右に何度か振って、
ポキっとやる。
一発でポキっと枝が折れる時もあるし、
何度も首を振らないと折れないのもある。
まだ枝がつながってブラブラしてるつなぎ目のところを、
嘴でガシガシやって、それでも折れなかったりする。
それでポキっとできたやつを、
嘴に挟むと、ぱあっと飛んで行く。
一羽目は空中で枝キャッチに成功。そのまま飛翔。
二羽目は折った枝が下に落ちて、辺りをキョロキョロ偵察しつつ着地、
ひょひょひょっと枝に接近して、無事回収。
嘴にしっかり挟んで、またまた一羽目と同じ軌跡を描いて飛び去った。

巣作りだな。
ポキリと持って行かれる木の方は、少し迷惑なのだろうが、
それでも木が枯れる程持って行ったりはしない。
そして、巣を使い終わった後の枝は、
いつかは土に戻って木の栄養にもなる。
何もプラスしない。
なにもマイナスしない。

やたらに変な、歪なのをプラスしたり、
貪欲にマイナスしたりするのは、
人間くらいのもんだな。

木の下にはさっきからひっきりなしの車の通過。
木もカラスも呆れながら、
人間ってやつの屁は臭いねえ、
くっさい、くっさい、
なんだか喉もいがらっぽいや、と
迷惑顔さ。

君たちも、何も足さず、何も引かず。
そういう風にやってみたら、どうだろうって。
首をくるるっと曲げてこっちを見た。

☆ 巣作りの鴉一枝も見逃さず