精神の領域

車で通り抜けたら、桜が咲いていた。
いつの間に。春が到着していた。
この、柔らかな紅の、訪れ。
空は、晴れ。

居合をやっている間、世界の他のことは、何も考えなかった。
精神を集中するのみ。
ここでこのように私が精神をただただ集中していることと、
世界のどこかで今起こっていることとは
何の関係もないようであり
今ここで私がこのようにしていることは、
一見どこかの誰かの何の役にも立ちそうにはないのだが、
そこにはやはり何がしかの関係があるような気もする。

祈りは無駄ではないし、
宇宙と直接繋がることで、
人は日常の痛みから、
一時自由になることができるのかもしれないのだから。
澄んだ精神の一片を、世界に捧げることで、澄んだ何かの総体が、少しだけ増すのであれば。

☆ 刈られたる薔薇の芽のまた蘇る