赤いフラッシュ

朝起きて、窓を開けたら、突然そこに春がいた。
大通りまで歩いて行く時に、
あんまり光が眩しくて、
しかめっ面をしていたのだけれど、
瞬きをする度に、目の前が真っ赤になって、
赤いフラッシュがチカチカして、
世界は赤とVの街の風景との間を行ったり来たりした。
この赤は、瞼の裏側を通して見える光らしい。
チカチカチカ。
この現象はこんな春の始まりの日にはいつも起こっていたはずなのに、
今まで気づかなかったのは不思議だ。
でも、じっと思い出してみると、
まだ言葉さえ使いこなしていなかった背丈の頃には、
世界はいつもこんな風に赤かったり、
青かったり、
チカチカ火花が舞っていたりした。
それから今日まで、どうしたわけか、
目の裏を通して見える光が赤いことを忘れていた。
そして、今日、強い風が吹いて、
突然目の前に春が降りて来た朝に、
その素敵な赤のフラッシュが再来したのだ。
チカチカチカ。
こんなにはっきりと、ある朝春はやってくるんだね。

☆ 閉じた目に春の光は赤く乗り