サウンドマシン

晴耕雨読っていうけれど、雨ばっかり降っているのでぜんぜん耕せない。仕方ないので昼働夜劇。今夜もまた、雨の中をパフォーマンスフェスティバルの公演を観にゆく。

今夜のはスイスのCompany Driftによる『Sound Machine』。題名と、「どうしたら聞こえないものを聞こえるようにできるのか?」なんていうキャッチコピーに惹かれて出掛けた。マッシュルームの音、ピーナッツの音、トマトの音、魚の歌、観葉植物の声、等々、いろんな音が確かに出て来るし、舞台の上の音は全て、舞台の上にいる3人の人が操作しているというのもなかなかのものなのだけれど、なんだか私はちょっとがっかりした。

本当に、カイワレ大根の音が聞けるのか! と期待して行ったのだけれど、舞台の上にある「いろんなものの音を聞く道具=サウンド・マシーン」は実はハリボテで、パフォーマーさん達は、録音してある効果音に動作を合わせるカラオケ方式で音と動きの魔法を作り出しているに過ぎない。最初はわあっ、と思ったのだけれど、種が分かってしまうとちょっと飽きてくる。途中、不思議な手袋でMIDI音源をコントロールしながら踊ったり歌ったりする面白いシークエンスもあるのだけれど、なんとなく15年前くらいにもこんなの見たことがあったよな、とかブツブツ言うシラけた小さい野郎共が頭の中に一杯沸き出してきて、感動できなかった。

ともあれ、このスイスのカンパニーの人々は妙にほのぼのしていて、公演後のアーティストトークが一番面白かったかもしれない。上演中気になって仕方がなかったのが3人のうち2人が手と足にそれぞれギプスをしてることだったのだけれど、衣装かと思いきや、本当のケガだった。一人は12月に雪崩に巻き込まれて骨折。もう一人はVに来る前に公演した町エドモントンの凍った路上で滑って転んで手を痛めたんだそうで。

ヨーロッパ全土で公演しているらしいのだが「フランスはあんまりやんない」そうである。「フランスの人たちには、ボクらの舞台はユルすぎるんじゃない〜?」とか言ってた。その昔、「スイス人のフランス語って、もーのーすーごーくーゆっくりーなーんーだーーーーよぉーーーーーー」なんて、ものすごくゆっくりなフランス語でスイス人をめちゃめちゃ揶揄していたフランス人の友人のことをフと思い出した。やっぱりお隣さん同士ってのは、いろいろあるんだろうな。

☆ 春待つや風の隙間の音を聞く