挑発の方程式

Vでは今、毎年この時期恒例のパフォーミング・アーツのフェスティバルをやっていて、いつもは一二本パラパラと観に行って終りなのだけど、今年はちょっと気合を入れて観に行ってみようかなと、7公演のチケットを入手。

今日はその最初の公演。Radoslaw Rychcikというポーランドの若手演出家率いるグループ。上演作品はフランスの劇作家ベルナール=マリ・コルテスの『綿畑の孤独の中で』。舞台の上にはエレクトロニック系ロック・バンドと俳優二人がいるだけ。ヒステリックな引き攣った身体動作を、正確に、でも狂ったように反復する俳優陣の存在感はなかなかのものだ。音楽とこれまたヒステリックな照明、最後にはエログロで、観客を不快に導くビデオも挿入されて、観客を挑発しまくる。入口で耳栓を渡されたので、何かあるなとは思っていたのだけど、俳優さんたちが途中でマイクに向って野獣みたいに叫び続けたりするの。でも、ヘビメタコンサートよりは静かなんで、耳栓はつけずに見てた。

テキストは抽象的だけど面白い。上演言語はポーランド語で英語字幕つき。ポーランド語が分かったら、もっと迫力あったのだろうけど、演劇で字幕を読むのって、どうも白ける。舞台から5メートル以内に座っていたのだけど、遥か遠くで起こっていることのように感じてしまう。

コルテス戯曲選

コルテス戯曲選

座っていた場所(距離?)が悪かったのかもしれないけれど、俳優さんたちの汗の結晶たる観客の感情への挑発は、なぜか私には届かなかった。まあ、ストロボライト+スモークマシン+絶叫等を長時間繰り返されると、嫌がおうにも心拍数上がったけどね。

パフォーマンスが終った後で、北京出身の友達と、この演劇は北京で上演できるかしら? なんて話をした。全裸シーンがあるからアウト。日本でもたぶん、パンツを履けとか言われるのだろう。でもまあ、今回の全裸シーンはいらなかったかもだね、というところで意見が一致。演劇の裸って、結構難しい。最初から、そのうち脱ぎそうな予感があったので、彼が脱ぎ始めた時に「あーあ」と思った。観客に裏をかかれては、挑発も機能しないってわけだ。

ビデオで流れていた映像には、後から分かったのだけれど、アレハンドロ・ホドロフスキーの映画のシーンが混じってた。ホドロフスキーの映画、改めて見てみようかなとフと思ったけど、トレーラー見て、気持ちが萎えた。寺山修司が絶賛し、ジョン・レノンが惚れ込んだと言うのだからスゴいのかもしれないけど、今見たい映画じゃないな、どうも。

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☆ ステージの男吠えたり夜冴ゆる