裸の王様

世の中には、皆が変だなあ、イヤだなあと思っているのに、なかなか変わらないコトがある。ずっと昔からそうだったからだとか、やっぱり変えられない、変わるわけがない、これでいいのだ、などというさまざまな理由ともつかぬ理由がつけられて、クリアな頭で3分くらい考えてみればやっぱり変えた方がいいんじゃないか、というようなことが、何年、何十年という単位で全く変わらなかったりする。

例えば、日本の教育制度。随分昔から、皆がどっか変だな、居心地悪いな、疲れるなあなんて思っている。特に大学受験のシステムは、変だなあといつも(私は)思う。あのシステムのお陰で、どれだけ無駄な勉強をしたことか。別に受験勉強しなくってもよかったのだけれど、あの頃の私は受験勉強をせずに、他のもっと面白くてためになることに自分の時間を使うという先見もなかったし、そんな勇気もなかった。そして、遂には受験勉強オタクと化して、風呂の中まで参考書を持ち込み、ごはんを食べる時にも箸の先で地図帳をめくるような日々に埋没していた。そのストレスたるや、かなりのものだったけれど、とにかく受験勉強に浸っている間はマジメに将来のことや世界のことを考えたりする必要はなかったので、楽と言えば楽だったのかもしれぬ。

あの年頃の、まだ脳味噌が柔らかかった時期に、もっと「本当に」いろいろなことを考えたり、世界に一歩踏み出してみたりしていたら、ずいぶんとその後の旅の経路は変わっていただろうな、と思う。

「『変えろ』と大きなメッセージを叫んでみても、変わりませんよ、日本。日本は変わるのに時間がかかる。内側から実績を積んでいくしかない」というのが、今日ちょっと立ち話をした若者の見解であった。そうか、確かにそうかも知れぬ。でも、それでも、私はやっぱり「変えちゃえ〜」とか暢気に叫んでみる。随分と無責任で素っ頓狂な声ではあるけれど、「王様は裸だぁ〜!」そんな馬鹿正直な正論を変な場所から叫んでみたりできるのがアーティストの特権であり、その存在理由でもあるのかな、とそんな気が少ししてるから。

☆ 王様は裸なりけり春を待つ