歌う家族

今日は、ここC国ではボクシングデーと言って、巷では激しくセールが行われ、そこに激しく消費者が群がる一日である。

とはいえ、Vではどうも購買意欲が沸き上がらないのが常で、セールと言われても重い腰が上がらない。先日、日本人の友人が「Vって、なんていうか、アドレナリン出ない街だよね〜」と言っていたのが、言い得て妙。デパートに行っても、ショッピングモールに行っても、どこか希薄で活気・刺激に乏しく、「買うでぇ」という信号が脳からなかなか放出されないので、財布の口もなかなか開かない。街全体が、低アドレナリン状態と言ってもいいかもしれない。これはストレス的見地からはいいことなのかもしれないけど、刺激がないのもそれはそれで困るのだ。時々、狂ったように興奮させられて、思わず衝動買いの一つもしてみたくなるのが人情なのだから。

そんなわけで、家でぶらぶらしていた夕方、テレビでこれが始まって、つい見てしまった。

映画として好きかどうかと聞かれれば、微妙だ。でも、あれだけの名曲を並べられてはグウの音も出ない。そして何より、この映画を見ると、遠い日に時空がポンと飛ぶ。小学生くらいの時、この映画がテレビで放映される時には必ず「ほら、『サウンド・オブ・ミュージック』が始まるよ」なんて声がかかる。ヒッチコックの映画(なぜか)と並び、この映画は我が家の家族奨励映画だったのだ。音楽一家という設定が、ちょっとウチの家族に似ていて、母はたぶん、マリアになりきって目の中に☆をいくつも灯らせながら、うるうる見てたと思う。しかし、父は決してエーデルワイスなんて歌わなかったので、映画は現実にはならなかった。

それにしても、映画の中で堅物のお父さんが突然歌い出すシーン、すごい。音楽にいかなる力があるとしても、一瞬で父がメロメロに溶けるとは。あの演技難しかったと思うな。突然歌を口ずさむ演技って、たぶん一番難しい演技の部類に入ると思う。それだけ、歌は別の世界に流れてるってことだ。

☆ 母と見し映画再び冬の午後