モールの朝

用事があって、朝から近くのモールに出掛ける。
朝10時。
開いたばかりのモールは人影もまばらで、
クリスマスの飾りだけがやたらに派手に整っていて、
どこか寂しい。
とはいえ、モールというのは、どんなに賑わっていても、
いつもどこか寂しいものなので、
このモールが特別他のよりも寂しいというわけではない。
こんな時間からモールに来ている人というのは、
まだほとんどのお店も開いていないわけで、
明らかに買い物目的で来ているのではない。
たぶん、暇つぶし。
あるいは、居場所が他にないから。
ひょっとしたら、ここが好きだから。
既に開店しているフードコートの椅子には、
こちらに一人、あちらに二人、などと、
そうした所在なげな影がぽつんと乗っている。
そういえば、私も以前、文庫本片手にわざわざこのモールに来て、
ぽつんとしたことがあったっけ。
モールは寂しいのだけれど、
本当に楽しい場所とは何かが調和しないような心の色を持て余して、
わざわざそういう寂しい気持ちの中に身を置きたいようなことが、
人にはときどきあるらしい。

☆ マフラーに巻かれし女子の人を待つ