横切る影

ひさびさに、V秘密の花園ことVan Dusen植物園へ。夕方5時。もうすぐ沈みますよという角度で射してくる光線がどこまでも透明で、人の少ない花園は秋の花が咲き乱れてどこまでも美しかった。蓮の花が池の表面にたくさん浮かんでいて、こっちは白、あっちは赤。小さいのは黄色。たまにピンクもある。莟がそろそろと開いた辺りの時節らしく、その初々しさと完璧なまでの花弁の配置が空気までをくっきりとさせる。この世にいたのだろうか。どこか遠い彼岸の匂いがした。

秋の植物園は、目でみるのではなくて、吸い込むものであるようだ。花は、吸い込まれた内側に咲いたのである。

この秋への右下がり。この感じは、そうだ、拉麺だ、とか訳のわからぬことを言いながら、ラッコ車は走る。そして、湯気の立つ味をズルズル言わせながらまたもや吸い込み、秋が十分内側に取り込まれた、よし、などとまたラッコ車を走らせ帰る道すがら。Vダウンタウンの車道を横切るその影は。私は思わず、「あっ」と声を出してしまったよ。ネコかな、と思うには平べったすぎる。鼠かな、と思うには大きくて黒いところに鮮やかな白い線。のこのこと、ふさふさと、車が来ても急ぐ様子もなくて、横断。

スカンク氏でした。

この白黒のもさもさ野郎に道で出くわすと、緊張する。轢かなくてよかった。そして一発見舞われなくてよかった。

☆ スカンクも浮かれ出るかや秋の月