イタリアン・ガール

Vの北の方の、とても美しい入り江でのBBQパーティーに誘って頂いた。
雨が降るという予想も素敵に外れてキラキラとした午後に、Vダウンタウンにて入り江に向うバスを待っていると、女の子が近づいて来て、「バスわ、きます、けっこ?」みたいなことを言う。英語なのだけれど、日本語に訳すとこんな感じ。文章がちょっとガタガタで、しかもこの巻き舌の妙な抑揚は。懐かしい予感がこみ上げて来た。どうやら、彼女も私と同じ入り江を目指しているらしい。

こっちも結構な日本語訛りで「わたしも、いくんだてぇ、その入り江」(英語なのになぜかまたN弁)と答えると、笑顔が返って来た。コミュニケーションに筋力がいる感じ、久々だけど手応えあり。

ようやくやってきたバスに隣り合わせに乗り、なんだかんだとおしゃべりしながら入り江まで来たのだが、彼女は6週間程前にVにやってきたイタリア人のビデオグラファーであった。なんだぁ、そーいがぁ、あんたもアートらかねー、なんて話で盛り上がったわけだが、夏のVのキラキラにすっかり魅了されたらしき彼女(Aちゃん)の最大の不安は、Vのアート事情であった。

アーティストが集まっていろいろ素敵なことが起こる場所を教えてくれというので、「Vのアートシーン、けっこうしょぼいかもらてぇ」なんて直球で私が答えたら、Aちゃんの顔がサササーっと暗くなって文字通り「がーん」ってな音が彼女の全身から聞こえた。「えええっ、こんなにステキな街なのに。いや、いや、いやん」とAちゃんは身悶えした。「でも、どんなにステキな街でもアートがなきゃ、ワタシ、生きていけない」とか呟きながら。

入り江にバスが到着すると、Aちゃんは一眼レフを取り出し、夏の輝きをカメラに収めながら消えて行った。果たしてAちゃんは、Vの住人となるのであろうか。ちなみにAちゃん曰く「イタリア以外でイタリア料理って呼ばれてるモンは、ぜんぜんイタリア料理じゃないんやで」(なぜか関西弁)だそうである。なんでも、今はカナダのホストファミリー宅にいるらしいのだが、毎日肉・肉・肉の肉攻めに遭っており、イタリア人はそんなに肉を食べないのでとても辛いんだそうだ。Aちゃんの作るパスタはどんな味がするんであろうか。Vの空気にちょっとIの風が吹き抜けた。

朝顔日記:えっと何日目だっけ:怠けた。

☆ 八月のバスに異国の訛りあり