ずっと歩いているらしい

朝からずっと休日らしいことをして過ごしたのだけれど、夕方になって、もう一つくらい何か休日らしいことをしてみようと、夕暮れの映画館に出掛ける。映画館の近くのダイナーでハンバーガーなどで腹ごしらえをまずしたのだけれど、そこにはテーブル毎に25セントコインを入れて、バチンバチンと四角いボタンを押し込む方式のマシンが置かれていて、そいつを稼働させるとお店の入口付近に置いてあるジュークボックスが動き出す。どう見ても動きそうにないくらい古そうだったので、単なるアンティークの飾り物かと思ったら、本当に動いたので尚更楽しかった。

日本にもあるよなあ、こういうの。テーブルに置いてあるやつ。ジュークボックスじゃなくて、コインを入れると星占いの紙切れが出て来るやつ。最近はあんまり見かけなくなったけれど、場末のコーヒーやなんかに行くと、今でもお目にかかることがある。ああいうのを見ると、ついコインを入れたくなる。でも、今まで一度しか入れたことがない。なんだか、その時のことは、シチュエーションも含めてよく覚えていて、その時にそこに居た人は今はもう居なかったりもして、ちょっと切ない。

さてさて、お目当ての映画はこちら。

歩いても歩いても [DVD]

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是枝監督の映画は『ワンダフルライフ』(英語の題名は『アフターライフ』)をなぜかロンドン辺りで見てカンドーしてから、ずっと気になって追いかけて来た。でも、『空気人形』を見てちょっとがっかりした後だったので、お願いです、またがっかりさせないでー、なんて勝手なことを思いながら観に行ったのだ。

最後のショットで電車が画面を通過した時、隣の席のラッコが「おず、おず」とか言うので、へえ、ラッコにも分かったか、と感心した。コンテンポラリーな小津、なんてきっと批評には書かれているのかな。脚本がとてもよくできていて、何もなさそうな日常から少しずつ人間の奥の底が見えて来る。コワイの。丁寧に撮られたいい映画。ラッコはこちらの方が『おくりびと』より好きだとか言っていた。私もそうだなあ、なんて思いながら、映画に出て来た台所は、子供の頃に住んでいた家の台所によく似てたなあ、なんてことも思いながら、月の出た坂をテクテクと歩いて、少し回り道をしていきたいような夏の夜を彷徨いながら帰った。

朝顔日記:59日目:観察さぼる。

☆ シネマ出て無言。秋の二人かな