まなざし

インドの映画監督サタジット・レイの『大地のうた』をDVDで観る。

大地のうた [DVD]

大地のうた [DVD]

ストーリーは昔話のようにシンプルだし、貧しい一家の暮らしをじっと追っただけの、派手さのない映画である。だけど、とても素晴しい。俳優の存在感が圧巻で、監督のまなざしの深さが画面から滲み出て来る。一家に間借りしている老婆は演技などというものを越えて生々しいし、母親はそこにいるだけで彼女の鬱屈とした気分がこちらに映り込んで来て息苦しくなる程だし、少女の屈折した微笑みはこちらの心を切なく貫く。

人間の心の動きを丁寧に描いていて、その心とは何ともやるせないものでもあるのだけれど、家族をつないでいる美しいものがその背後に流れていて、詩のような映像美が剥き出しのリアルさを包み込み、時間を越えた普遍的な家族の風景へと物語を昇華させている。

恥ずかしながら、レイの映画を観たのはこれが初めて。キアロスタミや小津を観た時のような優しく厳しいまなざしを感じた。
この監督、児童文学も書いているのだそうだ。とても興味がある。

朝顔日記:28日目:どうやら葉っぱの根元から出て来たのは4つ目の葉っぱらしい。まだすごく小さい。

☆ 泡昇るわたしも昇るソーダ