静かな場所への憧れ

今日はいろいろと音を録音。いつものことだけれど、曲を作り始めると、「これって料理に似てるなぁ」と思う。曲と言っても、譜面に書く方式のではないので、いろんな音を録音して、そいつをコンピューターの中に入れて、いろいろと加工する。でも、こだわりの寿司屋のおじさんが「今日は握れないよ」と店を閉めるような事態が時々発生してしまうのだ。そう、ネタすなわち元の録音素材が良くないと、いくらあれこれ手を入れてみても、美味しい料理=いい音はできないのである。

素材がいまひとつでも、まあ調味料でなんとかなるんじゃないかなー、とフィルターをバシバシかけてみたり、切ったり繋げたり重ねてみたりいろいろとやってみる。でも、大抵の場合、濁った音のごった煮みたいなのができるだけで、心の中にすうっと吸い込まれていくような透明で美味しい音には程遠い。そんな時には、今作ったばかりの料理をゴミ箱に潔く捨てて、新しい素材を求めて再び彷徨う。どこかに新鮮な音はないか、料理人の想像力を掻き立てるピカピカの有機野菜みたいなサウンドがフとした所に隠れていないか、あの手この手で素材を探し集める。

マイクをオンにして、ヘッドフォンで耳を覆って、世界の隅々を探検すると。あ、ここに。あ、あそこに。あるある。あちこちに眠っているキラキラした音が。そいつらをなんとかウチまで持ち帰ろうとするのだけれど、これが結構また難しい。自動車やら、室外機やらの音がどこまでもどこまでも邪魔をするのだ。特に車の音は、どんな山奥でも、原っぱの真ん中でも、聞こえること多し。「ここなら!」と思ってマイクを構えた時に遠くに「ぶーーーーん」とやっぱり聞こえる時のがっかりったらない(車め!)。車の音も、冷蔵庫の唸りも、人工的な音は何一つ届かないような場所まで行ってみたい。そこで、耳を澄まして、きれいな音をわんさか集めてみたいのだ。そんな幸せな音のある場所は、世界の中からどんどん消えているらしいのだけれど。

朝顔日記:16日め:あっ、四つ目の芽がチラっと出た。鉢の真ん中に。出たばっかりの茎のところはほんのり赤い。

☆ 沈黙の音見つけたり貝の風