フレグランス

雨が少し降っている。時々やむ。曇り空。肌寒い湿度。でも、一日中ラボに籠りっきりだったので、そのことにもあんまり気づかなかった。少し足が寒い。そのくらいのことにやっと気づいただけだ。

夕方になって、もうごはんも食べた後で、ラッコが変なことを呟いた。パラパラ雨の中を電車を乗り継いでガーデンセンターに行こうというのだ。確かに、ベランダのトマトには支柱が必要。しかも緊急に。というわけで、私はその変てこな提案に乗って、そして電車にも乗って、郊外のガーデンセンターに出掛けて行ったのだ。

夜9時に閉まるガーデンセンターに到着したのは7時半すぎ。さすがに人影はまばらで、でも、花だの木だの、野菜の苗だのがずっと向うの方まで並んでいて、いい香りを放っているやつもいる。特にすごくいいフレグランスの漂っているゾーンがあって、誰だ誰だ、一体何者だ、と探してみたら、ジャスミンだった。こんなのが家のベランダにやってきたらいいだろうなあ、と欲しくなったのだけれど、今は背丈50センチにも満たぬ鉢植えのジャスミンなのだけれど、どうやら2メートルくらいの巨木に成長するらしいので、諦めた。

こっちで素敵なフレグランスを放っているのは、大きなピンクのユリ。ドキドキするくらいの甘くせつない香りだ。秘密の花園だな、これは。閉店時間まで、花と数人の人しかいない場所を、ぶらぶらと歩き回って、あっちで深呼吸して、こっちで葉っぱに触って。なんてやっていたら、いつの間にか雨が強くなっていて、濡れて帰った。

☆ 山梔子のフレグランスや振返る