70%救済

昨晩、自分の心の形などというものを具体的に見てしまった余波か、一日をどうやって始めるか悩んでいるような朝だったのだけれど、9時半過ぎに電話が鳴り、友達が散歩に誘ってくれた。こういうのを神の助けと言うのじゃないかな、と勝手に考えながら、さっきまで重かった気持ちをぬぐい去りつつ外に飛び出したら、わあっという高音が聞こえそうな晴天だった。

ダウンタウンで合流して、Vで一番美味しいサンドイッチ屋でランチを入手。海岸のベンチで、ああでもない、こうでもない、そうかしら、そうかもね、などとお喋りしながらフレンチバゲットに噛み付く。風はまだ少し冷たいのだけれど、日向の光線角度はかなり高く強くなっていて、日陰にいると寒く、日向にいると暑いという都合上、半分だけ木の陰に入っているベンチに二人で腰を下ろして、日向に入ったり、日陰に入ったり、席を時々交換するという方式で丁度良い肌温度を保つことに成功した。

どうしようか、どうしよう、ああしよう、そうだね、そうだ。と、二人とも今日は休日モード(彼女は勤め人なので、本当に休日だったのだけれど)で、なんだか帰るでもなくぶらぶらしている。近くに、そうだ、チョコレートカフェなるものがあるはずだ、ということになり、そこに向ってまたぶらぶら。途中で一匹蜂が飛んでいて、ああそうだ、蜂は絶滅の危機に瀕しているのだってね、こまる、それは、とても困る。などとまた言いながら、私たちはチョコレートへと向って行く。

私は、5ドルもする(日本円にしたら、500円か。なんだ、安いね)、Vではとてもとても高い飲物を注文する。カカオ70%ホットチョコレートというものだ。飲んでいる時はそれ程にも思わなかったのだけど、後で洗面所の鏡を見たら、口の周りがぐるりと茶色になっていた。70% さすが。この茶色の縁取りで私は5ドル分満足した。

友達とは、なんと素敵なものなのだろう。あのまま、積み上げられた瓦礫の裏側の闇に埋もれて一日窒息していたかもしれない私の一日が、こんなにもキラキラとして。外界は爽やかな風が吹いていて、街の全部の角と隙間にまで光が入り込んでいた。こんな風にして、幸せというものはやってくる。

☆ 夏の蜂ただひたすらに向うなり