帰って来たピヨコトラベル!

本日のVは日本晴れ...じゃなかったカナダ晴れ。冬には珍しくピカピカのお日様が顔を出している。こんなうきうきとした朝に、何やら日の出頃からちょまちょまと動く影がある。サンタクロースにしては小さい。エルフにしても、まだ小さい。丸くて小さくて、でも何か鋭角の攻撃的な三角形のシルエットもちらちら見える。そして頭の上にはふわふわと揺れる和毛。こ、これは。ま、まさか。
そうです、あのアグレなピヨコが帰って来た! おかえりなさいピヨコ。この年末に、なぜかリターン・オブ・ザ・ピヨコトラベル。

朝から何しとんの、と尋ねるまでもなく、ピヨコは部屋を必死にソージしている。そう、本日あの懐かしのとーちゃんかーちゃんが隣国Aよりやって来るのである。そしてピヨコトラベル春の日本旅行に続き、とーちゃんかーちゃん+息子のV旅が繰り広げられようとしているのである。

ピヨコは昨日からそわそわしている。冬の旅は天候がまずは第一の心配事。V市の天気予報なんかを何日も前からピヨコは念入りにチェックして、「ぬーん」とかなんとか難しい顔をしている。晴れマークが少ない。雨マークが多すぎる。Vというのは基本的にアウトドア系の街なので、インドア系のお楽しみが少ない。雨が降ると、行き先がものすごく限定されてくる。ピヨコはてるてる坊主を作ろうかな、と真剣に考えたりした。

そんなピヨコの元に恐るべきニュースが届いたのは昨晩のことだった。とーちゃんかーちゃんの住むM市から乗り継ぎ地であるC市へ飛ぶヒコーキが悪天候のためキャンセルだというのだ。ごわーん。しかも、次のヒコーキが飛ぶのは火曜日。なぬー。ぬーん、ぬーん、ぬーん。綿密に立てたトラベルプランがガラガラと音を立てて崩れてゆく。どーするピヨコ。

しかも、数日前に起きたテロ未遂事件で、空港セキュリティーがものすごく厳しいらしい。ピヨコはヒコーキにふらりと乗れた昔がものすごく懐かしいなと思う。靴脱げだの、ベルト外せだの、バッグを膝に乗せちゃだめだの、そんなことを言わなくても、ヒコーキは皆の夢であって悪夢ではなかった時代。ピヨコはまた再びヒコーキにみんながふらりと乗れる平和な日が来ることを、密かに祈っている。人間の心が良い方向にどんどん向って、空の旅のわくわくが帰って来ますように、と。皆で念じよう。そうすれば、きっとまたそんな日はやって来るはずだから。

さて、ヒコーキのキャンセルにより、延期にさえ陥りそうだったこの旅。結局とーちゃんかーちゃんはものすごく早起きしてバスでC空港に向うという荒技で最初の難関をクリア。無事V空港に降り立った。そしてピカピカの陽射しの中、できたてほやほやのカナダ・ラインに乗車。ピヨコはまるでカナダ・ラインが自分の持ち物でもあるように誇らし気。クチバシがピクピク動いている。空港からのカナダ・ラインの車窓は、ちょっとローラーコースターみたい。電車は空に向って昇るように走り、そこから緩いカーブを描いてVへと滑り込んで行く。トラベルの開始だ。ゆけゆけピヨコ。ピヨコトラベルが帰って来た!!