芸者魂

本日も晴れ。こんなに晴れの日が続く冬は本当に珍しい。寒い。山の方は雪が降っているのかな。寒さと雨なら寒さをとりあえず取る。でも、C国の内陸の方ではマイナス20度だとか、そういう訳のわからん数字になることもあるらしいので、きっとそういう場所に行ったら雨でもあったかい方がいいとか言い出すに決まってるけどね。マイナス20度ってどういう感じなんだろう。マイナス3度とか5度とかだって十分寒いのに。ホームレスのおっちゃんおばちゃんらが内陸からVへ向ってどんどん移動して来るワケも分かる。でもVもここ数日ぐっと寒いよ。大丈夫か、おっちゃんおばちゃん。V市がシェルターへ収容する活動をしているらしいけれど、結構拒否する人もいるんだって。夜はもっともっと寒いというのに。あっちの部屋にもこっちの部屋にも夜にはほっこりとオレンジ色の電気が灯り、暖房機がほやほやの風を止めどなく吹き出しているっていうのに。なぜかしら、そのおっちゃんは、そのおばちゃんは月明かりの下で凍えていなければならない。暖かい風も灯りも本当は地上の一人残らず全員の分あるはずなのに。

友人の主宰するアート・カンパニーのファンドレイジング(資金集め)パーティーのための出し物を密かに準備中。アジアン・カルチャーとのつながりに特徴のあるカンパニーで、しかも今回のパーティーのテーマはなんと「歌舞伎」なので、いろんな和物の楽器演奏や踊りなどが披露されるらしい。私のところにも何か一芸どう? とお声がかかった。近頃はちまちまとしたオブジェやフィギュアなんかにばかり舞台を踏ませていて、自分で舞台に上がることがほとんどなかったので、思わず「うー」と唸ってしまった。

しかし、F犬街ではパンク芸者もやり、マダムバタフライやらハラキリやらしょんべん小僧やら、更にはただ80分間ずっと立ってる役やら、自動車の行き交う路上で大声で歌う役やら、中世の塔(鳩のフンが床一面に...)に何時間も閉じ込められてとにかく即興演技をやりつづける役だとか、お座敷がかかった時にはNOとは言わずなんとかして芸を捻り出して来た過去もある。最近は、何か芸はないのかと言われるとNO NO NO ばかり言ってぐうぐう眠り続けていたのである(冬眠)。しかし、冬眠から覚めた今、お座敷がかかったならば必ずや馳せ参じてお客様に喜んでもらいたいという芸者魂がむくむくと頭をもたげて来た。まずい、やばい。まだ私の中のアート芸者はしぶとくも、図々しくも、生きていたのだ! 

今回は何をどうしようかなー、と考えているうちにだんだん楽しくなって来た。あ、この感じ、小学校の時に「お楽しみ会」を企画する時のワクワクだ。担任のY先生がやたらフリーな人だったので、授業をつぶして「お楽しみ会」ばっかりやってる組だった。結局今でもあの時と同じことをやってるみたいだ。Vまでやって来て、またしても芸者魂がむくむくと蘇って来てワクワクしたりできるのは、Y先生のお陰であるとも言える。ゆとり教育なんて言葉ができたずっとずっと前のこと。
ああ、血が騒ぐ。また一芸やってしまいそうだ。